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「下痢が止まらない…」中医学でみる“腸”と“脾”の関係とは?
食べすぎたわけでもないのにお腹を壊しやすい。
ストレスや冷えで下痢が起きる──そんな方は、腸だけでなく脾や肝、腎のバランスが乱れている可能性があります。
中医学では「腸は脾の働きによって制御される」と考えられ、気血津液の調和がポイントとなります。
🧠 Case:20代男性、朝食後に毎日軟便、下痢気味
お腹が冷えるとすぐ下痢をする。
食後すぐに便意をもよおし、便の形がゆるい。
このような場合、中医学では脾陽虚や肝脾不和が疑われます。
📚 中医学における下痢のタイプ
- 寒湿下痢:冷えと湿気により脾胃が弱まり、緩便・腹鳴・冷感を伴う。
- 脾陽虚下痢:体を温める力が不足。特に朝に下痢する「五更瀉(ごこうしゃ)」が特徴。
- 肝脾不和:ストレスで肝が脾を攻撃し、腹痛・軟便・ゲップなどを生む。
- 湿熱下痢:飲食の不摂生で腸に熱と湿がこもり、臭いの強い下痢が続く。
下痢には足の太陰脾経・足の陽明胃経・足の少陰腎経・足の厥陰肝経などが関与します。
🔍 関連する経絡とツボ
🔸 足の太陰脾経・足の陽明胃経
- 中脘(ちゅうかん):胃と脾の中心。胃腸の働きを強める。
- 天枢(てんすう):おへその両側。胃腸の調整・下痢にも便秘にも使われる。
- 足三里(あしさんり):脾胃を整える万能ツボ。消化不良にも。
🔸 足の少陰腎経
- 太渓(たいけい):腎の機能を補い、冷えによる下痢に有効。
🔸 足の厥陰肝経
- 太衝(たいしょう):肝気を巡らせ、ストレス性の下痢に。
👐 セルフケアと養生法
- 温灸やカイロで中脘・関元を温める:冷えを防ぎ、脾腎を補う。
- 軽い有酸素運動:足三里への刺激にもなり、脾胃の運化を助ける。
- 香味野菜の活用:生姜、ねぎ、しそなどで気を巡らせる。
🌿 下痢に用いられる漢方方剤
- 真武湯(しんぶとう):脾腎陽虚による冷えと下痢。
- 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう):腹痛を伴う過敏性腸症候群に。
- 参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん):脾虚による慢性下痢に。
- 香蘇散(こうそさん):肝気うっ滞による気滞下痢に。
📝 まとめ
「下痢」は、単に冷たいものを食べすぎたからではなく、
脾・腎・肝・胃のバランスや体質的な“弱さ”が関与していることが多いのです。
経絡とツボを使って、身体の根本を整えることで、便通も自然と安定してきます。
次回は「動悸・不安感」に関する経絡の視点を深掘りしてまいります。