【症状別に見る経絡とツボシリーズ|第7回】:「下痢が止まらない…」中医学でみる“腸”と“脾”の関係とは?

「下痢が止まらない…」中医学でみる“腸”と“脾”の関係とは?

食べすぎたわけでもないのにお腹を壊しやすい。
ストレスや冷えで下痢が起きる──そんな方は、腸だけでなく脾や肝、腎のバランスが乱れている可能性があります。
中医学では「腸は脾の働きによって制御される」と考えられ、気血津液の調和がポイントとなります。

 

 

🧠 Case:20代男性、朝食後に毎日軟便、下痢気味

お腹が冷えるとすぐ下痢をする。
食後すぐに便意をもよおし、便の形がゆるい。
このような場合、中医学では脾陽虚肝脾不和が疑われます。

 

 

📚 中医学における下痢のタイプ

  • 寒湿下痢:冷えと湿気により脾胃が弱まり、緩便・腹鳴・冷感を伴う。
  • 脾陽虚下痢:体を温める力が不足。特に朝に下痢する「五更瀉(ごこうしゃ)」が特徴。
  • 肝脾不和:ストレスで肝が脾を攻撃し、腹痛・軟便・ゲップなどを生む。
  • 湿熱下痢:飲食の不摂生で腸に熱と湿がこもり、臭いの強い下痢が続く。

下痢には足の太陰脾経・足の陽明胃経・足の少陰腎経・足の厥陰肝経などが関与します。

 

 

🔍 関連する経絡とツボ

🔸 足の太陰脾経・足の陽明胃経

  • 中脘(ちゅうかん):胃と脾の中心。胃腸の働きを強める。
  • 天枢(てんすう):おへその両側。胃腸の調整・下痢にも便秘にも使われる。
  • 足三里(あしさんり):脾胃を整える万能ツボ。消化不良にも。

🔸 足の少陰腎経

  • 太渓(たいけい):腎の機能を補い、冷えによる下痢に有効。

🔸 足の厥陰肝経

  • 太衝(たいしょう):肝気を巡らせ、ストレス性の下痢に。

 

 

👐 セルフケアと養生法

  • 温灸やカイロで中脘・関元を温める:冷えを防ぎ、脾腎を補う。
  • 軽い有酸素運動:足三里への刺激にもなり、脾胃の運化を助ける。
  • 香味野菜の活用:生姜、ねぎ、しそなどで気を巡らせる。

 

 

🌿 下痢に用いられる漢方方剤

  • 真武湯(しんぶとう):脾腎陽虚による冷えと下痢。
  • 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう):腹痛を伴う過敏性腸症候群に。
  • 参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん):脾虚による慢性下痢に。
  • 香蘇散(こうそさん):肝気うっ滞による気滞下痢に。

 

 

📝 まとめ

「下痢」は、単に冷たいものを食べすぎたからではなく、
脾・腎・肝・胃のバランスや体質的な“弱さ”が関与していることが多いのです。
経絡とツボを使って、身体の根本を整えることで、便通も自然と安定してきます。

次回は「動悸・不安感」に関する経絡の視点を深掘りしてまいります。

この記事の分類

error: このコンテンツのコピーは禁止されています。