手の太陰肺経と手の陽明大腸経──呼吸と排泄でつなぐ「気」の流れ
「最近、鼻が詰まって苦しいし、お通じもよくないんです……」
そう訴える患者さんに、中医学ではこう尋ねることがあります。
「呼吸は浅くないですか? 皮膚が乾燥していませんか?」
なぜなら、肺と大腸は“表裏の関係”──つまり、表と裏をつなぐ一対の経絡でつながっているからです。
🌬️ 手の太陰肺経──呼吸と皮膚のバランスを守る
手の太陰肺経(たいんはいけい)は、肺の気を運ぶ経絡です。胸中の肺から始まり、肩・上腕・肘・前腕を通って親指へと至ります。
この経絡は、以下のような作用を担っています:
- 呼吸を整え、酸素を全身に行き渡らせる
- 皮膚・毛穴の開閉を調整し、外邪(風・寒・湿)から身を守る
- 汗と体温のコントロール
つまり、肺は「気」を全身に配る中枢であり、免疫の最前線とも言えます。
だからこそ、風邪やインフルエンザのような外邪の侵入は、まずこの経絡に影響を及ぼします。
🧩 肺経にまつわる不調
- 鼻水・鼻詰まり・くしゃみ(アレルギー性鼻炎)
- 咳・喘息・呼吸困難
- 肌の乾燥・湿疹・アトピー
これらの症状に共通するのは、「肺の機能が外部と関わっている」ということ。
肺は“外の気”と接する臓器であり、皮膚や鼻とも深く関わっています。
🧻 手の陽明大腸経──排泄を通じて体を浄化する
手の陽明大腸経(ようめいだいちょうけい)は、排泄・デトックスの主役とも言える経絡です。人差し指の先から始まり、手首・肘・肩・首・口角を通って鼻翼に至ります。
- 大腸経は、体にたまった老廃物を外に出す「浄化ルート」
- 同時に、顔や肌の代謝・炎症とも関連
- 便秘・ニキビ・熱感など「詰まり」と「こもり熱」に関与
つまり、大腸経がスムーズに流れることで「出す力」が高まり、体は軽く、肌も明るくなっていくのです。
🔥 大腸経にまつわる不調
- 便秘・下痢
- ニキビ・顔の赤み
- 歯痛・頬の腫れ
大腸の調子は、実は「肌」と「メンタル」にも反映されやすい──そんな視点を中医学は早くから持っていたのです。
🤝 肺と大腸──なぜ“表裏の関係”なのか?
この2つの経絡は、五臓六腑の関係で「表裏(ひょうり)」と呼ばれるペアです。
肺は“取り入れる臓”、大腸は“出す腑”。この「呼吸と排泄の対」が、健康の基本です。
「取り込むだけでは滞る、出すだけでは枯れる」──だからこそ、バランスが必要。
肺の力が弱れば大腸も冷え、逆に腸が詰まれば肺も圧迫され、咳が出ることもあります。
🧘 セルフケア──肺経・大腸経を整える生活
- 朝の白湯で“気”と“腸”を目覚めさせる
- 乾燥に注意:潤い食材(白きくらげ、梨、はちみつ)を取り入れる
- 深呼吸とストレッチ:特に腕と肩まわりをよく動かす
- 「列缺(れっけつ)」「合谷(ごうこく)」などツボの活用
肺経は呼吸と皮膚を、大腸経は便と肌を、それぞれケアできるルート。
ツボ押しや漢方だけでなく、日常のちょっとした工夫でも「経絡の流れ」は変わっていきます。
📘 次回予告:「胃」と「脾」の経絡──食べたものを“血”に変えるルート
吸って、出して。
呼吸と排泄をつなぐ「肺・大腸」の旅はいかがでしたか?
経絡は、単なる“線”ではなく、私たちの生き方そのものを支える“流れ”です。
次回は、食事と消化吸収の要「胃経」と「脾経」にフォーカスします。
「食べてるのに元気が出ない」「胃腸が弱くて太れない」──そんな方は必見です。
→ 続きを読む:足の陽明胃経と足の太陰脾経
足の陽明胃経と足の太陰脾経──食べたものを“血”に変える消化のルート 「ちゃんと食べてるのに、元気が出ないんです……」 そんな声、よく耳にします。 食事はしているのに疲れやすく、朝がつらく、風邪もひきやすい。 中医学では、それは[…]