【感情と経絡(五志)シリーズ|第2回】「うれしすぎて眠れない」─“心神”と喜びのバランスとは

「うれしすぎて眠れない」──“心神”と喜びのバランスとは

喜びは本来、良い感情のはず──。
でも、うれしすぎて眠れない、胸がそわそわして落ち着かない…。
それは「心神(しんしん)」の乱れという中医学的な視点から見えてくる不調かもしれません。

 

 

🧠 Case:「うれしい」のはずなのに、なぜか疲れる

結婚式を控えた女性が、喜びと期待に胸をふくらませていたにもかかわらず、夜になると眠れず、動悸や不安感に悩まされるように…。
中医学では、こうした状態は「喜びすぎが心を乱す」と考えます。

 

 

📚 中医学でいう「喜」と心の関係

五志の中で「喜(き)」は心に属す感情とされます。
喜びそのものは良い感情ですが、過剰な喜びは逆に「心神(しんしん)」を乱し、不眠・多夢・注意散漫・疲労感を生じることがあります。

中医学では「心」は単に臓器ではなく、精神活動(神)の主座とされます。「心神」が安定していれば、睡眠・思考・意識が調和します。

 

 

 

 

🔍 関連する経絡:手の少陰心経

心経は胸部から小指に向かって流れ、血流・脈・神志に深く関係します。
そのため、以下のような症状があらわれやすくなります:

  • 動悸・息切れ
  • 不眠・多夢・早朝覚醒
  • 緊張しやすく、焦燥感が強い

 

 

 

🌿 使われる漢方方剤と生薬

「心神不安」や「心脾両虚」「心肝火旺」などのパターンで処方が選ばれます。

代表的な方剤:

  • 酸棗仁湯(さんそうにんとう):虚証の不眠・夜中に目が覚める
  • 天王補心丹(てんのうほしんたん):心陰虚に由来する動悸・不眠・多夢
  • 加味帰脾湯(かみきひとう):心脾両虚・不安感・疲れやすさ

 

 

 

代表的な生薬:

  • 酸棗仁(さんそうにん)…鎮静・安眠
  • 遠志(おんじ)…心神安定・記憶力改善
  • 竜眼肉(りゅうがんにく)…補血安神

 

 

 

 

👐 セルフケア:心神を安定させるツボと生活養生

📍 ツボ:

  • 神門(しんもん):手首の小指側、心経の原穴。不眠・不安を鎮める。
  • 内関(ないかん):心包経。胸のつかえや緊張を和らげる。

 

 

 

🌿 養生法:

  • 23時までに就寝し、睡眠のリズムを整える
  • 夜はスマホ・テレビを控えて副交感神経を優位に
  • ハーブティー(ラベンダー、カモミール)でリラックス

 

 

 

 

 

📝 まとめ

「うれしい」はずの出来事が、心身に負担となることもある──。
中医学は、感情のバランスを保つことで身体の健康を守るという考え方を大切にしています。

「喜びすぎ」は決して悪ではありませんが、“静かに喜ぶ”という養生観も必要かもしれません。

次回は、「考えすぎて疲れる──“思”と脾の関係」について解説いたします。

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