足の陽明胃経と足の太陰脾経──食べたものを“血”に変える消化のルート
「ちゃんと食べてるのに、元気が出ないんです……」
そんな声、よく耳にします。
食事はしているのに疲れやすく、朝がつらく、風邪もひきやすい。
中医学では、それは「脾胃(ひい)」の力が弱っているサインだと考えます。
🍴 食べたものが“気血”に変わるルートとは?
食事は、体にとって「素材」であり、エネルギーや血をつくる源です。
しかし、胃と脾の働きが弱っていれば、それはうまく“変換”されません。
中医学では、この消化吸収の中心を「足の陽明胃経」と「足の太陰脾経」という2本の経絡が支えています。
🥘 足の陽明胃経──取り入れる力を司る経絡
胃経は「受け入れる臓腑」、つまり食べ物を受け止め、送り出す役割を担います。
経絡としては、目の下から顔・胸・腹部・太もも・すねを通って、足の第2趾まで流れます。
- 主な作用:食物を受け入れ、胃気を上昇させる
- 経絡上の主治部位:顔面のむくみ・胃痛・便秘・膝痛・足の冷え
胃経が弱ると、胃もたれ・げっぷ・口臭・食欲不振などが起きやすくなります。
反対に、胃熱がこもると逆流性食道炎・便秘・ニキビなどの“上へ上る不調”が出やすくなります。
🫀 足の太陰脾経──食べ物を“血”に変える内なる力
脾は中医学における“消化の要”です。
食べ物から「気(エネルギー)」と「血(栄養)」を生み出し、全身に送り届ける力を持っています。
経絡は、足の親指からすね・太もも・腹部を通り、脇の下まで達します。
- 主な作用:水穀を運化し、血と気を生成
- 脾虚症状:食後眠くなる・むくみ・下痢・血が足りない・あざができやすい
脾が弱ると、「せっかく食べても栄養にならない」「吸収されずにむくむ」といった状態に。
特に女性では、月経不順・経血量の少なさ・貧血傾向といった症状にもつながります。
🤝 胃と脾の経絡はセットで考える
胃経が“受け取る”役目、脾経が“変換して配る”役目を担っており、セットでバランスを取るのが大切です。
胃だけケアしても、脾が弱れば吸収されない。
逆に脾を補っても、胃の運搬力がなければ気血が届きません。
🌿 脾胃経を整えるセルフケア
- 食べすぎ・冷たいものを控える(脾胃は“湿”と“寒”が苦手)
- よく噛んで、ゆっくり食べる
- 朝は白湯+胃経をさする(膝外〜スネ内側にかけて)
- おすすめのツボ:足三里(あしさんり)、陰陵泉(いんりょうせん)
「なんとなく疲れる」「胃が重い」そんな日には、足の内側外側を手でさすってみてください。
経絡の流れが整うことで、体がふっと軽くなるのを感じるかもしれません。
📘 次回予告:「手の少陰心経と手の太陽小腸経」──心の声と排出のバランス
今回は“食べたものをエネルギーに変える”脾胃経の世界をご紹介しました。
次回は、「心」と「小腸」のペア──手の少陰心経と手の太陽小腸経について学びます。
心が不安定なとき、消化や腸の働きも揺らぎませんか?
感情と排出のつながりを、経絡の視点から一緒に紐解いていきましょう。
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