【中薬×処方読解:第6回】加味逍遥散を構成から読み解く─疏肝・補血・調経の三位一体

【第6回】加味逍遥散を構成から読み解く──疏肝・補血・調経の三位一体

加味逍遥散(かみしょうようさん)は、女性のストレス・イライラ・月経不順に広く使われる代表的処方です。疏肝・補血・調経という三位一体の作用は、構成中薬の精妙な配伍に支えられています。この記事では、中薬ごとの役割を深掘りしながら、気血の調整という処方の真価を読み解いていきます。

 

 

🌿 処方の全体像:逍遥散+加味の構造

加味逍遥散は、逍遥散に清熱薬を加えた処方です。

  • 👑 君薬:柴胡(さいこ)
  • 🧠 臣薬:当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)
  • 🛡 佐薬:牡丹皮(ぼたんぴ)、山梔子(さんしし)
  • 🔗 使薬:生姜(しょうきょう)、薄荷(はっか)、甘草(かんぞう)

この配伍は、「気の巡り・血の滋養・熱の発散」が調和した構造をとっています。

 

 

👑 君薬:柴胡──気の巡りを整える核心

柴胡は肝気を疏通させ、ストレスによる気滞を改善する役割を担います。
この処方の中枢であり、情志の乱れを整える力を持ちます。

 

 

🧠 臣薬:補血と脾のサポート

  • 当帰・芍薬:血を養い、肝血虚による情緒不安・月経不調を調整
  • 白朮・茯苓:脾を補い、肝脾不和を是正しつつ、気血の生成を助ける

「気と血の両面を支える」構成となっており、女性の体質ケアに適しています。

 

 

🛡 佐薬:加味された清熱薬の意義

  • 牡丹皮:血分の熱を冷まし、鬱熱を排除
  • 山梔子:心肝の熱を清め、イライラ・胸苦しさを緩和

これらは「加味」の名の由来であり、精神的緊張による内熱に対応するキー薬です。

 

 

🔗 使薬:疏肝・調和・中焦導入

  • 薄荷:疏肝解鬱と清涼感をもたらし、柴胡の作用を助ける
  • 生姜:胃腸を温め、脾胃を守る
  • 甘草:全体を調和し、補気の補助にもなる

処方全体のバランスと調整に不可欠な存在です。

 

 

📈 構造的理解:「疏肝・補血・調経」の三層構造

この処方は以下のような立体構造を取ります:

  1. 1️⃣ 肝気の疏通(柴胡・薄荷)
  2. 2️⃣ 気血の充実と生成(当帰・芍薬・白朮・茯苓・甘草)
  3. 3️⃣ 鬱熱の除去(牡丹皮・山梔子)

このようにして、気滞・血虚・熱の三つを同時に処理する高度な設計となっています。

 

 

📘 まとめ|情志と月経を整える“心身一如”の処方

加味逍遥散は、「気血のアンバランス」や「肝鬱による月経トラブル」に応える、まさに心と身体をつなぐ処方です。疏肝・補血・清熱・調経と、現代女性に多いストレス由来の諸症状に応用可能な、柔軟かつ奥深い薬方です。

 

 

🔧 補足情報

  • 本記事における君臣佐使の分類および中薬の役割区分は、複数の中医学文献・臨床ガイド・教育資料に基づきつつ、配伍の構造と意図が明確になるよう再整理しています。文献間に差異がある場合もありますが、読者の理解を深める構成を優先しています。
  • また、臨床鑑別ポイントについても、各方剤の応用判断を助ける目的で整理しています。症状と証の関連は患者ごとに異なるため、中医学的な弁証の一助として活用ください。
  • 中薬の分類は原則として『中薬学』における標準的分類体系(例:補気薬・理気薬・清熱薬など)に準拠し、方剤構造の分析と実践的な応用理解を支えるものとして記載しています。

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