【中薬×処方読解:第8回】柴胡加竜骨牡蛎湯を構成から読み解く─神経症と肝心腎の三焦バランス

【第8回】柴胡加竜骨牡蛎湯を構成から読み解く──神経症と肝心腎の三焦バランス

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は、神経症、不眠、動悸、情緒不安定などに用いられる名方。中医学では、肝気鬱結と痰熱・心腎不交の問題を同時に調える処方として知られています。本記事では、各構成中薬の配伍とその狙いを丁寧に紐解きます。

 

 

🌿 処方の全体像:多器官に働きかける13味の構成

柴胡加竜骨牡蛎湯は、以下の13味から構成されます:

  • 👑 君薬:柴胡(さいこ)
  • 🧠 臣薬:黄芩(おうごん)、半夏(はんげ)、生姜(しょうきょう)
  • 🛡 佐薬:桂皮(けいひ)、茯苓(ぶくりょう)、大棗(たいそう)、竜骨(りゅうこつ)、牡蛎(ぼれい)、大黄(だいおう)
  • 🔗 使薬:人参(にんじん)、鉛丹(えんたん)※現在は用いず代替あり

肝・心・腎という三焦の不調を横断的に整える構造です。

 

 

👑 君薬:柴胡──肝気の疏泄を助ける軸

柴胡は少陽の和解・肝気の疏泄を担う主役であり、情緒不安や抑うつ、不眠といった症状に関与します。

 

 

🧠 臣薬:黄芩・半夏・生姜──和解・清熱・化痰の三重奏

  • 黄芩:柴胡とセットで少陽病に用いられ、肝火・心火を清す
  • 半夏:痰飲を除き、気逆を鎮めて心を安定させる
  • 生姜:胃気を和し、半夏の峻烈さを和らげる

心身を安定させるための“基盤整備”を担います。

 

 

🛡 佐薬:鎮静・理気・通便までをカバーする配伍

  • 竜骨・牡蛎:重鎮安神薬として、不安・動悸・多夢を鎮める
  • 茯苓・大棗・桂皮:脾を補いながら気の巡りと内熱を調える
  • 大黄:通便薬として、腸内の鬱積を除去し精神安定に寄与

鎮静と体内デトックスの両立が狙われています。

 

 

🔗 使薬:人参と鉛丹(代替)──全体を整える影の主役

  • 人参:元気を補い、補気安神の働き
  • 鉛丹(現在は不使用):鎮静作用あり、現代では牡蛎や竜骨で代用される

構成の隙間を埋め、バランスを取る重要な位置付けです。

 

 

📈 構造的理解:肝心腎の三焦バランス調整処方

この処方は以下のような機能構成を持ちます:

  1. 1️⃣ 肝の疏泄:柴胡・黄芩・桂皮
  2. 2️⃣ 心の安神:竜骨・牡蛎・茯苓・半夏
  3. 3️⃣ 腎の安定と排泄:人参・大黄・鉛丹(代替)

三焦(上・中・下)それぞれに調整薬が配され、全体として「内外・陰陽・気血神」を安定させます。

 

 

📘 まとめ|神経症状に対する中医学的アプローチの象徴

柴胡加竜骨牡蛎湯は、多様な不定愁訴に対応しうる処方構造を持っています。その中薬構成を理解することで、「心身の不安定をどう整えるか」という視点が中医学的に深まり、臨床にも活かせる武器となるでしょう。

 

 

🔧 補足情報

  • 本記事の構成と分類は、『中薬学』『方剤学』『臨床応用解説書』等に基づき、配伍意図と実用的理解を優先して整理しております。
  • 臨床鑑別ポイント
    • 🔻 神経過敏:不眠・動悸・緊張感・怒りっぽさ・夢が多い
    • 🔻 少陽病タイプ:胸脇苦満・往来寒熱・苔薄黄
    • 🔻 脾腎虚:疲労・冷え・下痢傾向・排便異常
  • 中薬分類(中薬学準拠)
    • 🌿 疏肝薬:柴胡
    • 🔥 清熱薬:黄芩
    • 💤 安神薬:竜骨・牡蛎・茯苓
    • 🌬 理気薬:桂皮・半夏・大棗
    • 💧 利水薬:茯苓
    • 🌱 補気薬:人参・大棗
    • 🚽 通便薬:大黄

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