【第7回|中薬入門】中薬の使い分けとは何か?──“症状に応じて選ぶ”応用力の基礎

【第7回|中薬入門】中薬の使い分けとは何か?──“症状に応じて選ぶ”応用力の基礎

「同じ症状でも処方が違うのはなぜ?」
それは、“症状の裏にある体質や状態(証)”によって、中薬の使い分けがされているからです。

この記事では、実例をもとに中薬・方剤の使い分けの考え方をやさしく解説いたします。

 

 

 

🎬 はじめに:「この症状にはこの薬」が通用しない?

頭痛・腹痛・冷え・のぼせ──
こうした症状に対して、西洋医学では原因臓器や病名に応じて治療薬が決まります。

しかし漢方では、「その人の体質や状態(証)に合った薬を選ぶ」ことが基本です。

つまり、“同じ症状でも処方が違う”のが漢方の特徴
この考え方の核となるのが、中薬の「使い分け」です。

 

 

📘 「使い分け」とは?──証に応じた中薬・方剤の選択

中薬の「使い分け」とは、症状の背景にある証(体質や病態)に応じて、中薬や方剤を選び分けることです。

この判断には、四診(望・聞・問・切)による診察と、弁証論治(証を見極め治療方針を決める)が欠かせません。

 

 

🧪 実例①|頭痛に使う中薬の違い

タイプ 主な中薬・方剤
風寒型 外感による頭痛・寒気 川芎、羌活、麻黄
→ 川芎茶調散
風熱型 のぼせ・喉の腫れ・目の充血 菊花、連翹、薄荷
→ 銀翹散
瘀血型 慢性頭痛・刺痛 丹参、桃仁、紅花
→ 血府逐瘀湯

このように、「頭痛」という1つの症状でも、背景によって使う薬はまったく異なるのです。

 

 

 

🧪 実例②|冷えに使う中薬の違い

タイプ 主な中薬・方剤
陽虚型 全身の冷え・倦怠 附子、乾姜、人参
→ 四逆湯、真武湯
血虚型 手足の冷え・顔色不良 当帰、芍薬、地黄
→ 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
気虚型 疲労感・息切れ・食欲不振 黄耆、人参、白朮
→ 補中益気湯

 

 

🧭 使い分けの指針:何を見て分けるのか?

  • ① 主訴(症状):最も困っていること(例:咳、便秘、冷え)
  • ② 体質:虚実・寒熱・陰陽など(例:疲れやすい・のぼせる)
  • ③ 経過:急性か慢性か、発作的か持続的か
  • ④ 全体像:舌診・脈診・顔色・声の調子・食欲などを総合的に判断

これらをもとに、症状に対して“どの証か”を絞り込み、それに合う中薬・方剤を選ぶのが使い分けの流れです。

 

 

 

📚 方剤での使い分け|似た処方の違いを見る

比較処方 違いのポイント
補中益気湯 vs 六君子湯 どちらも補気剤。
前者は気虚による脱力・下垂に、後者は胃気虚+痰湿に。
葛根湯 vs 麻黄湯 どちらも風寒に使うが、前者は表寒+首肩こり、後者は悪寒・無汗の急性表寒に。
当帰芍薬散 vs 温経湯 どちらも婦人科向け。前者は血虚+水滞、後者は血虚寒凝による月経不順に。

 

 

🧠 まとめ:中薬の使い分けは“理解の応用”

分類・帰経・君臣佐使・配伍──これまで学んだ要素を踏まえ、
症状や証に応じて中薬・方剤を「選べる」ことが、使い分けの本質です。

「この薬はなぜ選ばれたのか?」
「別の薬でもっと合うものはないか?」
そんな視点を持つことで、中医学の理解は一段と深まります。

 

 

📘 次に読むべき記事|中薬の学びを生活に活かすには?

次回はいよいよ「中薬との付き合い方」へ。
学んだ知識を、薬局・セルフケア・薬膳など、日常の中で活かす視点をお伝えします。

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