🍯 甘草(かんぞう)|調和と解毒の万能サポーター
甘草(かんぞう)は、マメ科ウラルカンゾウなどの根を乾燥させた中薬で、補気・止咳・鎮痙・緩急・解毒・調和など、あらゆる働きを持つ「万能生薬」です。
中医学では「補気薬」に分類されつつ、処方内での配伍(調和)役として極めて重要な役割を果たします。
🧾 基本情報
- 名称:甘草(かんぞう)
- 英名:Licorice root
- 学名:Glycyrrhiza glabra / G. uralensis / G. inflata
- 使用部位:根・根茎
- 性味:甘/平(生)・微温(炙)
- 帰経:心・肺・脾・胃経
- 分類:補気薬
🌿 主な効能と中医学的働き
甘草は「十方九甘草」と言われるほど、ほぼすべての処方に配される基本中の基本の中薬です。
特に「炙甘草(しゃかんぞう)」=蜂蜜で加工した甘草は、補気・止咳・緩和作用がより強くなります。
- 補気益脾: 疲労・食欲不振などに対し、穏やかに気を補う。
- 潤肺止咳: 肺陰を潤し、乾燥性や刺激性の咳に対応。
- 緩急止痛: 筋肉や内臓の痙攣・腹痛・胃痛を和らげる。
- 清熱解毒: 咽頭痛・皮膚炎・薬物中毒などに。
- 調和諸薬: 他の生薬の毒性を抑え、全体のバランスをとる。
このように、単独でも配伍でも万能に機能する「**薬方の潤滑油**」といえる存在です。
📚 応用される処方例と役割
- 芍薬甘草湯: 甘草が筋肉の痙攣を緩和。こむら返り・急性の腹痛に。
- 甘草乾姜湯: 寒冷による腹痛・下痢・虚弱に。甘草が補気しながら温中止痛。
- 麻黄湯: 麻黄の発汗力を和らげ、副作用を抑えるための緩和薬。
- 炙甘草湯: 心悸亢進・虚弱・不整脈傾向に。補気+養心安神。
- 甘草瀉心湯: 胃腸症状+心身の不安定さに。緩和・解毒作用を活かす。
甘草は君薬にも臣薬にも佐使薬にもなり得る、極めて柔軟性の高い生薬です。
🧪 成分と現代医学的知見
甘草の主要成分はグリチルリチン(Glycyrrhizin)で、以下のような薬理作用が報告されています。
- 抗炎症・抗アレルギー作用(副腎皮質ホルモン様作用)
- 粘膜保護・潰瘍抑制(胃粘膜修復)
- 抗ウイルス作用(特に肝炎ウイルス、単純ヘルペスなど)
- 鎮痙・鎮咳作用
ただし、長期多量使用により偽アルドステロン症(浮腫・高血圧・低カリウム血症)の副作用リスクがあるため、用量・期間を守ることが重要です。
📖 古典における記載
『神農本草経』では「上品」に分類され、「百薬の毒を解し、五臓を和す」と記述。
『本草綱目』では「諸薬の調剤役」とされ、すべての方剤をまとめ上げる“調和の中軸”と評されています。
⚠️ 注意点と禁忌
- 浮腫・高血圧の既往: グリチルリチンによる電解質異常に注意。
- 長期連用: 偽アルドステロン症の予防のため、連用は最小限に。
- 高齢者・腎機能低下: 電解質管理に留意が必要。
甘草は「優しさの中に強さを秘める」生薬ですが、その力を安全に引き出すには適正な使用量とバランス感覚が求められます。
📝 まとめ
甘草は、漢方の中で「調和と潤いと守り」を与える唯一無二の存在。
気を補い、咳を止め、痛みを和らげ、毒を解し、そして何より他の薬の良さを引き出す、名脇役でもあります。
補気薬の中でも、その調和力と緩和力は別格──
「薬方の完成度を高めるために必要な最後の一匙」として、甘草は今日も多くの処方で活躍しています。
📣 最後に:もう一記事読んでみませんか?
最後までお読みいただき、ありがとうございます。甘草の特徴について少しでも理解が深まりましたら幸いです。
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