💧 沢瀉(たくしゃ)|体にたまった水と熱を洗い流す、利水の名手

💧 沢瀉(たくしゃ)|体にたまった水と熱を洗い流す、利水の名手

沢瀉(たくしゃ)は、オモダカ科の多年草・タクシャ(Alisma orientale)の塊茎を乾燥させた中薬で、利水滲湿・清熱作用に優れる「利水薬」のひとつです。
腎・膀胱にたまった湿や熱を取り除くことで、むくみ、排尿異常、口渇、めまい、下痢などを改善します。

🧾 基本情報

  • 名称:沢瀉(たくしゃ)
  • 英名:Alisma Rhizome
  • 学名:Alisma orientale
  • 使用部位:塊茎
  • 性味:甘・寒
  • 帰経:腎・膀胱経
  • 分類:利水滲湿薬(利水薬)

🌿 主な効能と中医学的働き

沢瀉は「寒性で下に行く」性質を持ち、特に腎・膀胱に蓄積した湿熱を排出する力に優れます。
余分な水分(湿)を外に出すと同時に、内側の火(熱)を冷ますことができるため、尿トラブル・浮腫・口渇・頭重感などに対応します。

  • 利水滲湿: むくみ、排尿困難、尿の混濁、下痢、脚気など。
  • 清熱泄火: 腎陰虚による虚熱・骨蒸熱・口渇・寝汗などに。

📚 応用される処方例と役割

  • 六味丸: 沢瀉・茯苓・牡丹皮が「三瀉」として腎の熱と湿を排出。
  • 八味地黄丸: 沢瀉が排尿調節を担い、補腎剤にバランスを与える。
  • 猪苓湯: 泌尿器の炎症・尿閉・頻尿などに。利水清熱の主薬として。
  • 防已黄耆湯: 湿によるむくみ・多汗・肥満体質に。沢瀉が水湿を除く。

沢瀉は補薬と配伍して副作用を防ぐ“安全弁”としても活躍する、処方設計上の調整役でもあります。

🧪 成分と現代医学的知見

  • アリスマトール: 利尿・血圧低下・抗炎症作用
  • アリスマ酸: 抗菌・肝機能保護・脂質代謝改善
  • 利尿作用: 腎血流量の増加と水分排泄促進
  • 尿路の殺菌作用: 細菌性膀胱炎などへの応用もあり

現代では高血圧・腎機能低下・浮腫・糖尿病性腎症などへの補助的活用が注目されています。

📖 古典における記載

『神農本草経』では「上品」に分類され、「小便を利し、湿を排し、熱を除く」と記載。
『本草綱目』でも「腎水を通じ、痰飲・脚気・頭重を治す」とされ、体内の水・湿の調整役として高く評価されています。

⚠️ 注意点と禁忌

  • 陰虚・寒証: 寒性が強く、虚寒体質では冷えや頻尿が悪化することがある。
  • 尿量正常者: 不必要な利水により脱水を招く恐れ。

補陰薬や温補薬とのバランスを取りながら使うのが理想です。

📝 まとめ

沢瀉は、体の下にたまりやすい「湿と熱」を洗い流す“利水の名手”。
むくみ・尿トラブル・口渇・熱感など、「湿熱」によるトラブルに対応し、清熱と利水のバランスを持つ希少な中薬です。

また、補腎薬との組み合わせによって副作用を防ぐ“配伍の名脇役”としても活躍し、古典から現代まで変わらぬ信頼を集めています。

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。沢瀉の働きについて少しでも理解が深まりましたら幸いです。
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