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「考えすぎて疲れる」──“思(し)”と脾の気の関係
悩みごとが頭から離れず、気がつくとどっと疲れている…。
「もっと考えなきゃ」と思う一方で、食欲もなく、集中力も続かない──。
それは中医学でいう「脾(ひ)」の弱り、「思(し)」による気の停滞かもしれません。
🧠 Case:考えすぎて体が重だるい
50代女性。仕事と家庭の両立に悩み、夜も寝る前にいろいろと考えてしまう。
次第に食欲が落ち、胃がもたれ、疲れやすくなってきた。
これは「思い悩む」ことによる脾の気の損傷が疑われるケースです。
📚 中医学でいう「思」と脾の関係
五志において、「思(し)=思慮・悩み・考えすぎ」は脾に属する感情とされています。
脾は「気血を生み出す源」であり、思い悩みが続くと、「脾気虚」や「気滞」となり、疲労感・胃腸の不調・集中力の低下などが起こります。
特に、「働きすぎ+気遣いすぎ」という日本人の性格傾向は、脾に負担をかけやすいとされています。
🔍 関連する経絡:足の太陰脾経
脾経は、足の親指から脚の内側、腹部、胸に向かって流れます。
脾は胃とペアで「消化吸収」の中核を担うため、以下のような症状が出やすくなります:
- 食欲不振・胃もたれ
- 倦怠感・やる気の低下
- 軟便・下痢
🌿 使われる漢方方剤と生薬
脾気を補い、気の巡りを助ける処方が選ばれます。
代表的な方剤:
- 帰脾湯(きひとう):考えすぎ・不眠・食欲低下・疲労感に
- 六君子湯(りっくんしとう):胃腸虚弱・消化不良・神経性胃炎に
- 香蘇散(こうそさん):気滞による気分の落ち込み・食欲不振に
代表的な生薬:
- 人参(にんじん)…脾気を補う
- 茯苓(ぶくりょう)…胃腸を整える
- 遠志(おんじ)…心脾両補・記憶力UP
👐 セルフケア:脾を支えるツボと生活養生
📍 ツボ:
- 足三里(あしさんり):胃腸を強くし、気を補う万能ツボ
- 脾兪(ひゆ):背中にある脾の背部兪穴。疲労感に有効
🌿 養生法:
- 湿気・冷えを避け、温かい食事を中心に
- 朝食を抜かず、決まった時間にゆっくり食事
- “考えない時間”を意識的に作る(散歩・香り・瞑想)
📝 まとめ
「考えること」は知性の証でもありますが、「考えすぎ」は心身のエネルギーを消耗します。
脾を守ることは、体と心の“土台”を整えることに他なりません。
次回は「悲しみと肺のつながり」について深掘りしてまいります。