目次
高尿酸血症と痛風:数値よりも“体の内側”を見直す
「尿酸値が高めですね」──健康診断でそう指摘されたことのある方は少なくありません。高尿酸血症は放置すると「痛風」へ進行するだけでなく、腎臓病や高血圧、動脈硬化のリスクにもつながります。
現代医学では主に「尿酸値7.0mg/dL以上」で診断されますが、数値だけを見て薬を飲むだけでは根本解決にはなりません。
「なぜ尿酸がたまるのか?」を体の内側から見直すこと──それが中医学(東洋医学)のアプローチです。
本記事では、現代医学と中医学の違いを整理しながら、湿熱・瘀血・脾虚・腎虚などの体質別に漢方・薬膳で整える方法をご紹介します。
現代医学での高尿酸血症の定義と治療
現代医学では、以下のような数値と状態で高尿酸血症を診断します:
- 尿酸値:7.0mg/dL以上
- 自覚症状がない「無症候性高尿酸血症」も要注意
原因と分類:
- プリン体の過剰摂取(ビール・肉類など)
- 腎機能低下による尿酸排泄障害
- 過体重・内臓脂肪・糖尿病との関連
治療法:
- 尿酸生成抑制薬(アロプリノールなど)
- 尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンなど)
- 食事療法:プリン体制限、水分摂取、アルコール制限
しかし、薬を飲んでも再発する、生活習慣に気を付けても数値が下がらない──
そんなケースには、「体質的背景」に着目する中医学の補完的視点が有効です。
中医学における尿酸蓄積の見立て:湿熱・瘀血・脾虚との関係
中医学では「尿酸値が高い」ことを病名として扱いませんが、以下のような証(体質状態)と関連づけて診ます:
- 湿熱:体に湿(余分な水分)と熱がこもり、関節や筋肉に炎症・痛みをもたらす
- 瘀血:血の巡りが悪く、関節や末梢部に老廃物が停滞しやすくなる
- 脾虚:消化吸収の力が弱く、湿や痰がたまりやすい体質
- 腎虚:腎精の不足による老化・代謝低下・慢性化の背景
これらの証が複雑に絡み合うことで、体内に尿酸をためやすくなり、やがて痛風・関節炎・腎機能低下などを引き起こします。
体質別にみる高尿酸血症の証と特徴(湿熱型/瘀血型/脾虚型/腎虚型)
1. 湿熱型
- のぼせ・口の苦み・尿が濃い・関節が腫れて熱感あり
- 赤ら顔・脂っぽい肌・舌苔が黄色でべっとり
2. 瘀血型
- 慢性的な関節痛・舌や唇が暗紫色・しこりやしびれ感
- 痛みが刺すようで、夜間に悪化
3. 脾虚型
- 疲れやすい・食欲がない・軟便傾向・むくみやすい
- 舌が膨れ気味で歯痕あり、苔が白く湿っぽい
4. 腎虚型
- 足腰がだるい・排尿が弱い・疲労感・冷えやすい
- 加齢や慢性病との関連が強い
証に基づく代表的な漢方処方と応用例
● 湿熱型
- 竜胆瀉肝湯:肝胆の熱と湿を取り除き、炎症を鎮める
- 茵陳蒿湯:肝機能が低下し湿熱があるときに
● 瘀血型
- 疎経活血湯:血流改善と関節のこわばり・痛みに
- 桂枝茯苓丸:下腹部の瘀血に対応、女性にも
● 脾虚型
- 防己黄耆湯:むくみ+疲労体質の基本方剤
- 参苓白朮散:胃腸虚弱+痰湿が多い体質に
● 腎虚型
- 八味地黄丸:加齢による腰痛・排尿異常などに
- 牛車腎気丸:下肢のだるさや糖尿病体質に
薬膳・食材・生活習慣の整え方(五性・五味・経絡)
湿熱タイプにおすすめ
- はとむぎ、冬瓜、緑豆、苦瓜、どくだみ茶
瘀血タイプにおすすめ
- 玉ねぎ、黒豆、紅花、青魚、酢・梅干しなど酸味
脾虚タイプにおすすめ
- 山芋、かぼちゃ、なつめ、生姜、米粥、雑穀
腎虚タイプにおすすめ
- 黒ごま、クルミ、黒豆、山薬、にら、長芋
さらに、冷えすぎない生活・夜ふかしの防止・ストレス対策も大切です。
まとめ|痛みの背景にある“証”を知ることから始めよう
尿酸値が高い、関節が痛い──その背景には、体質の乱れや臓腑のバランス崩れが隠れています。
「血」「湿」「熱」「腎精」など、体の中で滞っているもの・足りないものに目を向けてみませんか?
薬に頼るだけではなく、自分の体の“声”を漢方や薬膳の知恵で聞き取り、整えていくことが、
痛風や高尿酸血症との上手なつき合い方になります。