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【第4回】当帰芍薬散を構成から読み解く──補血・利水・調経の三位一体
「婦人薬」として知られる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、実は補血・利水・理気の三機能が調和した名方です。
本記事では、その構成中薬を一つずつ紐解きながら、なぜこの処方が「多様な不定愁訴に効く」とされるのかを中薬視点から深掘りします。
🌿 処方の全体像:どんな中薬が入っているのか?
当帰芍薬散は、六味で構成されています。
- 👑 君薬:当帰(とうき)
- 🧠 臣薬:芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)
- 🛡 佐薬:茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)
補血薬と利水薬がバランス良く配され、水滞+血虚+瘀血という複雑な病態に柔軟に対応できる構成です。
👑 君薬:当帰──補血と調経の軸
当帰は、血を養い巡らせる中薬の代表。特に女性の生理周期の調整に優れています。
この処方では「血虚が原因の痛み・冷え・水滞」に対し、中心的な“補いの力”として機能します。
🧠 臣薬:芍薬・川芎──血を養い、巡らせる
- ✅ 芍薬:肝血を補い、筋肉の緊張を緩和。腹痛・痙攣を抑える役割も。
- ✅ 川芎:血行を促し、瘀血を除く。生理痛や頭痛にも有用。
当帰とあわせて「補血+活血」のバランスが取られており、単なる補いにとどまらないダイナミズムがあります。
🛡 佐薬:茯苓・白朮・沢瀉──水湿を捌く利水トリオ
- ✅ 茯苓:健脾・利水。気虚に由来する水滞を調整。
- ✅ 白朮:脾を補い、湿を除く。浮腫・倦怠感への対応。
- ✅ 沢瀉:余分な水分を排出し、下焦の湿熱にも作用。
これらが補血薬と組み合わさることで、「血を補いながら、水を捌く」構造が成立します。
📈 三位一体の構造:補血・利水・調経
当帰芍薬散の中薬構成は、以下のように整理できます:
- 💉 補血:当帰・芍薬・川芎
- 💧 利水:茯苓・白朮・沢瀉
- 🔄 調経(調整):補血と利水を同時に行い、周期や痛みを調整する
この構造により、血虚・水滞・瘀血といった複合症状に、全方位からアプローチできる柔軟性が生まれています。
🧭 「婦人薬」の枠を超える応用力
当帰芍薬散は、月経不順や冷え性、むくみといった婦人科症状だけでなく、高齢者の倦怠感や浮腫、精神疲労にも応用されます。
中薬の視点から見ると、性別や年齢を問わず「血と水」のバランスを崩しやすい人にフィットする処方なのです。
📘 まとめ|補血剤の応用の広がりを読む
当帰芍薬散は、ただの婦人薬ではありません。
中薬を一つずつ読むことで、「補血」と「利水」を一体に扱う高度な配合構造が見えてきます。
その見立てと構成の妙を知ることは、補血剤の臨床応用力を飛躍的に広げてくれるでしょう。
🔧 補足情報
- 君臣佐使分類は『方剤学(辰巳洋)』『漢方処方解説(秋葉哲生)』を参考に構成。
- 臨床鑑別の視点としては以下が重要:
- 🔻 むくみ+冷え+生理不順(または周期性の不調)
- 🔻 血虚に水滞を併せ持つタイプ
- 🔻 体力中等度以下・胃腸虚弱体質
- 生薬分類(中薬学に準拠):
- 💉 補血薬:当帰・芍薬
- 🔄 活血薬:川芎
- 💧 利水滲湿薬:茯苓・白朮・沢瀉
この記事の分類
- シリーズ分類:【中薬応用実践シリーズ】
- 弁証分類:血虚
- 効能治法分類:補血(ほけつ) 利水滲湿(りすいしんしつ) 活血 調経