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当帰四逆加呉茱萸生姜湯|四肢末端の冷え・しもやけ・腹痛──“血虚寒凝”を温補して通す方剤
手足が氷のように冷たい、冬にしもやけができやすい、冷えるとお腹が痛む──それは「血虚・寒凝・陽気不足」による末端循環不全かもしれません。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)は、四肢の冷え・冷え性の腹痛・しもやけ・虚寒証に対応する、温経散寒・補血養血・通脈止痛の処方です。
本記事では薬剤師向けに、構成・証・適応・服薬指導・製剤情報・類方比較までを網羅して解説いたします。
📘 基本情報と構成生薬
- 名称:当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
- 出典:『傷寒論』
- 分類:温経散寒・補血通脈
- 構成生薬:当帰、桂枝、芍薬、木通、細辛、甘草、大棗、呉茱萸、生姜
🔍 主治と治法
- 主治:四肢末端の冷え、しもやけ、冷えによる腹痛、腰痛、月経困難、レイノー現象、虚寒体質
- 治法:温経散寒・養血通脈・緩急止痛
🧪 ユニット構造と配合意図
- 当帰・芍薬:補血養肝・血行促進・冷えによる痛みを緩和
- 桂枝・細辛・呉茱萸・生姜:温経散寒・四肢の陽気を通す
- 木通:通絡止痛・利湿通経
- 大棗・甘草:補中和胃・緩急止痛・調和諸薬
血虚+寒凝により四肢・下腹・経絡が塞がった状態を温補して整える構成です。
🔬 証型と適応判断
- 証型:血虚寒凝・四肢厥冷・寒痛・通絡不暢
- 適応:末端の冷え/腹部・腰部の冷痛/しもやけ/冷えによる月経困難
- 舌:淡胖・苔白/脈:沈細無力
- NG:実熱・湿熱・炎症性疾患
📦 製剤別の比較とOTC入手
- 医療用製剤:あり(ツムラ38番、クラシエ、コタロー、オースギ)
- OTC製剤:あり(第2類医薬品/漢方薬局・通販などで購入可能)
💊 副作用と注意点
- 温性の薬剤のため、実熱証や炎症所見がある場合は避ける
- 甘草含有により長期服用時は偽アルドステロン症に注意
- 妊婦への使用は慎重に(桂枝・通草・細辛等の影響)
🔁 類方との鑑別・比較
- 当帰四逆湯:呉茱萸・生姜を含まない基本方。四肢の冷えが主で痛みが軽度
- 苓桂朮甘湯:冷え・めまい・動悸など水分代謝異常に由来する場合
- 人参湯:胃腸虚寒による下痢・腹痛中心の虚寒型に
👨⚕️ 服薬指導のポイント
- 「冬になるとしもやけができる」「手足が冷えて眠れない」「冷えによる腹痛がある」などを確認
- 冷えの強い季節に限定して使用するのも一案
- 入浴・保温・運動など非薬物的温活支援と併用する
🧾 使用例と処方医の意図
- 四肢厥冷・冬季のしもやけ傾向・末端循環不全の高齢者
- 冷え性女性の月経困難・腹痛・無月経傾向
- 胃腸虚弱による腹部冷痛・過敏性腸症候群(寒タイプ)
🔚 まとめ|“冷え切った四肢・腹部”に陽気と血流を与える温補通絡方
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、四肢末端の冷え・虚寒性の痛み・寒凝血瘀に対して、温経・補血・通絡を組み合わせて体の内側から温め整える処方です。
薬剤師としては、冷えの質・痛みの有無・四肢の感覚・寒熱弁証を丁寧に確認し、季節・生活指導と合わせて安全に支援することが求められます。