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紫雲膏|ひび・あかぎれ・やけど・痔に──皮膚を守って修復する伝統の漢方軟膏
皮膚が切れる、ただれる、熱傷や痔の痛みに悩む──そんなとき、古くから処方されてきたのが紫雲膏(しうんこう)です。
紫雲膏は、当帰と紫根を中心に、皮膚の炎症・損傷・乾燥に対して修復・保湿・抗菌・抗炎症作用を発揮する漢方外用薬です。
本記事では、薬剤師向けに成分・効能・適応・使い方・注意点をわかりやすく解説いたします。
📘 基本情報と構成成分
- 製品名:紫雲膏(しうんこう)
- 製造販売:株式会社ツムラ
- 分類:漢方軟膏(第2類医薬品)
- 構成成分(100g中):
- トウキ:10g
- シコン:10g
- ゴマ油:78g
- ミツロウ:12g
- 豚脂:4g
🔍 効能・効果
- ひび・あかぎれ・しもやけ
- 痔核による痛み・出血・ただれ
- やけど(熱傷)・軽度の外傷
- 皮膚の炎症・乾燥・亀裂
🧪 作用機序と構成意図
- 当帰:血行促進・肉芽形成促進・保湿作用
- 紫根:抗炎症・抗菌・皮膚修復作用(紫草根由来のシコニン)
- ゴマ油:基剤として保湿・浸透性向上
- ミツロウ・豚脂:軟膏の基質・創面保護・保温保持
皮膚の損傷部を守りながら、修復と再生をうながす設計です。
🔬 使用上の注意点と禁忌
- 創傷が感染を伴っている場合は、抗菌薬との併用または適応外
- 広範囲または深い熱傷には使用不可(医療機関紹介)
- 紫根に対するアレルギーの既往がある場合は使用を避ける
- 衣服への着色注意(紫色)
📦 製剤・剤形と市販入手
- 剤形:油脂性軟膏(赤紫色・軟膏基剤)
- 包装:15g/30g/50g(市販)
- OTC製剤:あり(第2類医薬品)
- 処方箋医薬品:あり
👨⚕️ 服薬指導・使用アドバイス
- 1日数回、患部を清潔にしてから適量塗布
- ガーゼなどで覆うと、薬剤の保護と拡散防止に有効
- 色素が強いため、寝具・衣類への着色に注意喚起
- 症状が改善しない場合は1週間を目安に受診を勧める
🔁 類似外用剤との比較・鑑別
- ユーパスタ軟膏:外傷・褥瘡・皮膚潰瘍に使われる保湿・肉芽形成促進剤(医療用)
- オロナインH軟膏:軽度な傷・化膿予防・にきびに用いる市販軟膏
- キンダベート軟膏:ステロイド系外用薬。炎症が強い場合に使用(医療用)
🔚 まとめ|“皮膚を修復しながら守る”伝統の漢方軟膏──血流促進と炎症鎮静の両輪
紫雲膏は、熱傷・ひび・あかぎれ・痔などの皮膚の損傷・炎症に対して、当帰・紫根の修復作用を基軸に据えた伝統的な外用漢方です。
薬剤師は、使用目的・創部の状態・感染の有無・色素沈着リスクを的確に見極めたうえで、短期的な外用管理と生活指導を行うことが求められます。