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人参湯|胃腸虚寒・下痢・食欲不振──“脾胃虚寒”を温めて補う即効型温補方
胃が冷えるような感覚、軟便・下痢、食欲がわかない──それは「脾胃虚寒」による消化機能の低下かもしれません。
人参湯(にんじんとう)は、胃腸虚弱・冷え・食欲不振・下痢などに対して、温中補気・健脾和胃の即効性ある対応を行う温補方です。
本記事では、薬剤師向けに構成・証・適応・配合意図・服薬指導・副作用・製剤比較まで詳しく解説いたします。
📘 基本情報と構成生薬
- 名称:人参湯(にんじんとう)
- 出典:『傷寒論』
- 分類:温中補気・止瀉方
- 構成生薬:人参、乾姜、甘草、白朮
🔍 主治と治法
- 主治:胃腸虚寒による下痢、食欲不振、嘔吐、腹部冷痛、倦怠、四肢冷感
- 治法:温中補気・健脾益胃・止瀉和中
🧪 配合意図とユニット構造
- 人参:補中益気・脾胃機能の中核強化
- 乾姜:温中散寒・寒性下痢や胃冷を温めて緩和
- 白朮(蒼朮) :健脾益気・利湿止瀉
- 甘草:脾胃調和・止痛・緩和作用
少数精鋭のシンプル構成で、虚寒に傾いた胃腸症状に迅速対応します。
🔬 証型と適応判断
- 証型:脾胃虚寒・中焦虚寒型
- 適応:寒気を伴う下痢/嘔吐/胃もたれ/体力低下/冷え性の腹部症状
- 舌:淡胖・苔白/脈:沈遅・無力
- NG:実熱下痢・湿熱下痢・食滞
📦 製剤比較とOTC入手
- 医療用製剤:あり(ツムラ32番、クラシエ、コタローなど)
- OTC製剤:あり(第2類医薬品/市販薬としても広く流通)
💊 副作用と注意点
- 甘草による偽アルドステロン症に注意(長期使用)
- 乾姜の温性で、実熱傾向には悪化の可能性あり
- 胃腸が非常に虚弱な方では1日量の調整が必要な場合も
🔁 類方との比較・鑑別
- 附子理中湯:より強い冷え・虚寒がある場合に
- 参苓白朮散:下痢・倦怠が慢性化し、湿困が主体の場合
- 六君子湯:脾虚+気滞が背景の胃腸虚弱に
👨⚕️ 服薬指導のポイント
- 「冷えるとお腹を壊す」「水っぽい下痢が続く」「食べるとすぐに下す」などの症状を確認
- 服用は温服で/空腹時または食前に
- 冷たい食事や飲料は併用期間中は避けるよう指導
🧾 使用例と処方医の意図
- 風邪後の胃腸虚弱による下痢・倦怠
- 術後・病後の食欲不振と下痢傾向
- 高齢者の慢性軟便・冷え・食べ疲れ
🔚 まとめ|“冷えて弱った胃腸”をシンプルに補う中焦即効補気方
人参湯は、胃腸虚弱・寒冷・水様下痢に対して、温中・補気・健脾のシンプルかつ力強い構成で対応する処方です。
薬剤師としては、下痢の質・冷えの有無・舌・脈などを確認しながら、温服・食事指導・生活養生までを含めた支援が重要です。