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二朮湯|五十肩・肩関節周囲炎──“風寒湿痹”に温補と通絡で挑む整形外科特化方
肩が上がらない、寝返りで肩が痛い、朝方のこわばりがつらい──これらは「五十肩(肩関節周囲炎)」に多い訴えです。
二朮湯(にじゅつとう)は、寒湿痹阻によって肩関節に炎症や拘縮をきたした状態に対し、風寒除去・温経通絡・補気止痛を行う処方です。
本記事では、薬剤師向けに構成・証・適応・服薬指導・製剤情報・他処方比較までを正確に解説いたします。
📘 基本情報と構成生薬
- 名称:二朮湯(にじゅつとう)
- 出典:『万病回春』
- 分類:祛風散寒・温補通絡方
- 構成生薬:炒蒼朮、白朮、南星、陳皮、茯苓、香附、酒芩、威霊仙、羗活、甘草、姜半夏、生姜
🔍 主治と治法
- 主治:五十肩、肩関節周囲炎、慢性関節痛、寒湿による拘縮・運動制限
- 治法:祛風散寒・温経通絡・化湿止痛
🧪 ユニット構成と配合意図
- 炒蒼朮・白朮:燥湿健脾・寒湿痹阻の根本除去
- 南星・姜半夏:化痰散結・止痛作用強化
- 陳皮・香附:理気・気滞の解除で肩周囲の通絡促進
- 酒芩・威霊仙・羗活:風寒湿痹を祛除し関節痛・拘縮を改善
- 茯苓:利湿健脾・湿の停滞除去
- 甘草・生姜:調和・止痛・胃腸保護
🔬 証型と適応判断
- 証型:風寒湿痹・肩関節拘縮・寒冷刺激で悪化する痛み
- 適応:五十肩/夜間〜朝方の肩痛/拘縮・運動障害/慢性の肩こり
- 舌:淡・苔白/脈:沈緩あるいは弦
- NG:熱感や腫脹が目立つ急性炎症期
📦 製剤別の比較とOTC入手
- 医療用製剤:あり(ツムラ88番)
- OTC製剤:あり(第2類医薬品/漢方薬局・一部ドラッグストアで取扱)
💊 副作用と注意点
- 温性薬が主体のため、実熱証には不向き
- 甘草:長期投与における偽アルドステロン症の注意
- 肝機能障害・高血圧・むくみのある患者では慎重に
🔁 類方との鑑別・比較
- 疎経活血湯:瘀血が絡む広範囲の関節痛に対応
- 桂枝加苓朮附湯:寒冷悪化・冷え性傾向の強い肩痛に
- 独活寄生湯:慢性・虚弱体質の痺症向け
👨⚕️ 服薬指導のポイント
- 「寒くなると痛みが悪化」「可動域が制限される」などを確認
- 冷えや湿気を避け、入浴や温熱療法と並行して指導
- 急性炎症や強い熱感がある場合は他処方への切替を検討
🧾 使用例と処方医の意図
- 肩関節周囲炎:拘縮期・夜間痛・可動制限の軽減を狙って処方
- 整形外科における五十肩症例:リハビリ併用下での疼痛緩和
- 冷え・湿気による肩痛・頚肩部の鈍痛への第一選択肢
🔚 まとめ|“寒湿+肩関節の痹”に温めて通す古典的温補方
二朮湯は、寒湿痹阻による五十肩・肩関節周囲炎に対して、温陽・通絡・補気活血の作用を持つ整形外科特化型の漢方処方です。
薬剤師としては、発症タイミング(寒冷期)・可動域制限・冷え感の有無などを的確に見極め、外用療法やリハビリとの併用指導を行うことが重要です。