【中薬×処方読解:第5回】四物湯を構成から読み解く─補血方の基本骨格と臨床応用

【第5回】四物湯を構成から読み解く──補血方の基本骨格と臨床応用

四物湯(しもつとう)は、補血方の原点とも言える処方です。その構成はわずか4味ですが、補血と活血のバランス、配合の意図、現代応用まで深く学ぶ価値があります。本記事では、構成中薬の特性から処方設計の骨格を読み解き、臨床での使い方や派生処方との関係性まで解説いたします。

 

 

 

🌿 四物湯の構成:わずか4味に秘められた補血戦略

四物湯は、以下の4味からなる非常にシンプルな処方です。

  • 👑 君薬:地黄(じおう)
  • 🧠 臣薬:当帰(とうき)
  • 🛡 佐薬:芍薬(しゃくやく)
  • 🔗 使薬:川芎(せんきゅう)

それぞれが血を補い、血を巡らせる作用を担っています。この構成こそが、補血方の「型」として中医学の基礎に位置づけられている理由です。

 

 

👑 地黄:血を養う「陰血」の主薬

四物湯の君薬は地黄です。血を補う力に優れ、滋陰の効果もあることから「補血の主軸」とされています。血虚による顔色の悪さ、めまい、月経異常などに対応する処方で必ず登場します。

 

 

🧠 当帰:活血を備えた補血薬

当帰は補血と活血を兼ね備えた重要な生薬です。単なる「足す」だけでなく、血の流れを整えることで滞りを防ぐ役割も担います。婦人科領域では欠かせない存在です。

 

 

🛡 芍薬:血を柔らげ、筋を和らげる

芍薬は酸味を持つため、収斂作用があります。これにより血を留め、筋の緊張を和らげる作用も期待されます。当帰との相性がよく、しばしば対になって処方されます(当帰芍薬湯など)。

 

 

🔗 川芎:巡りを促す活血薬

四物湯の使薬である川芎は、気血を巡らせる作用があり、「止まっている血」を動かすことができます。単なる補血では滞りやすくなるため、川芎が全体の流れを整える補助となるのです。

 

 

🔍 四物湯の応用と派生処方

四物湯は、他の処方の基礎構造として多く使われています。たとえば:

  • 🧪 温経湯:冷え・瘀血対策として四物湯+温陽薬
  • 🧪 芎帰膠艾湯:止血重視の補血方
  • 🧪 加味逍遙散:精神安定や肝気鬱結に対応しつつ補血

このように、「四物湯+α」の処方設計は、あらゆる臨床シーンに応用可能です。

 

 

📘 まとめ|「補血の基本」を学ぶには四物湯から

四物湯は、シンプルでありながらも中薬の配合意図が明快な処方です。中薬の作用分類や弁証論治の理解において、最も学びやすく、応用範囲も広い処方の一つです。
今後、加減方を読み解く際にも、四物湯を出発点にすることで理解が飛躍的に深まります。

 

 

🔧 補足情報

  • 本記事の君臣佐使分類は『方剤学(辰巳洋)』『トリセツ(川添和義)』等を基に構成。
  • 四物湯の臨床鑑別ポイント:
    • 🔻 血虚症状(顔色不良・めまい・月経不順)
    • 🔻 婦人科症状全般(無月経・不妊・冷え)
    • 🔻 慢性疾患後の回復期
  • 中薬分類(中薬学準拠):
    • 🩸 補血薬:地黄・当帰・芍薬
    • 🌬 活血薬:川芎

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