30代女性/冷え性・PMS改善に使った方剤例
「生理前になるとイライラ、落ち込み、むくみや腹痛がつらい…」
それはPMS(月経前症候群)かもしれません。とくに30代に入り、冷えやストレス、不規則な生活によって月経トラブルが悪化する方が多くなっています。
今回は、冷え性とPMSの両方に悩む30代女性のケースをもとに、漢方的な視点から証の見立てとおすすめの方剤をご紹介します。
症例紹介:30代女性・冷え性とPMSに悩む
この方は会社員の30代女性。以下のような症状を訴えて相談に来られました。
- 生理前にイライラ・憂うつ感が強くなる
- 手足が常に冷たい
- 顔色が青白く、疲れやすい
- 月経周期は28〜35日だが、経血が少なくなってきた
- むくみやすく、夕方には脚が重だるい
問診・舌診・脈診などの所見から、この女性の体質は「気血両虚+水湿停滞」と考えられました。
中医学的には「脾虚を土台とした気血不足」「血の巡りの停滞」「腎陽の不足による冷え」などが複合している状態です。
中医学的な証:気血両虚・寒湿・瘀血傾向
PMSは「肝」の疏泄失調、「脾」の運化機能低下、「腎」の温煦不足が絡むことが多く、
特にこの方は、以下の3つの要素が同時に見られました。
- 気血の不足:疲れやすく、顔色が青白く、月経血が少ない
- 寒湿内生:冷えが強く、むくみやすい。舌は淡く、苔は白く湿潤
- 瘀血傾向:生理痛、経血の塊、舌の裏の静脈怒張
このようなタイプには、「補気・補血」「温陽散寒」「利水・活血」など多角的なアプローチが必要です。
使用した漢方処方:当帰芍薬散+附子末
この方には、次の2つの漢方薬を組み合わせて使用しました。
① 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
気血を補い、体を温めながら水分代謝を整える処方。
とくに「血虚」+「水滞」+「冷え」が複合した女性に適しています。
婦人科系の定番薬で、PMSや月経不順、むくみに広く用いられます。
構成生薬:
- 当帰・芍薬・川芎:補血・活血・調経
- 茯苓・沢瀉・白朮:利水・健脾
② 附子末(ぶしまつ)
冷えが強く、陽虚の傾向がある場合に追加される代表的な温補薬。
附子には強い温陽作用があり、当帰芍薬散に加えることで冷えによる倦怠感やむくみの改善を図ります。
服用後の変化と経過
- 1か月後:手足の冷えが軽減。月経前の気分変動がやや和らぐ。
- 2か月後:むくみが改善され、夕方の脚のだるさが軽減。
- 3か月後:月経前後の腹痛がほとんど消失。気分も安定しやすくなった。
体質改善には一定の期間が必要ですが、この方は生活習慣(冷飲の制限・入浴習慣など)にも取り組まれたため、改善が早く見られました。
補足:PMSに対応する代表的な漢方処方
PMSには次のような方剤も、証に応じて使い分けられます:
- 加味逍遙散:イライラや精神不安が強いタイプ
- 桂枝茯苓丸:下腹部痛や経血に塊がある瘀血タイプ
- 温経湯:冷えと月経不順がある虚寒タイプ
中医学の知恵で女性の不調を根本から整える
PMSや冷え性は、「体質によるもの」とあきらめがちですが、
中医学では「証」に応じた対応で、体の内側からじっくり整えることが可能です。
とくに30代以降は、体質の偏りが表面化しやすい時期。
西洋薬だけに頼らず、自分の証を知り、体と向き合う漢方の力を活用してみてはいかがでしょうか?
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