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食欲がない高齢者に|漢方と薬膳で無理なく栄養を補う方法とは?
「最近、食が細くなってきた」「おかゆばかりで栄養が心配」――
高齢者の食欲不振は、体重減少・筋力低下・フレイル(虚弱)を引き起こす重要なサインです。
加齢による消化機能の低下や、持病・薬の影響、気力の衰えなど、背景はさまざま。
中医学では、こうした状態を「脾気虚」「胃陰虚」「気血不足」といった体質の乱れとして捉え、体に負担をかけずに整えていく方法がたくさんあります。
この記事では、漢方的な視点から見る食欲不振の原因と、体質に応じた漢方・薬膳・生活改善のポイントを、薬剤師×国際中医師の視点から解説いたします。
なぜ高齢者は食欲が落ちやすいのか?
年齢とともに、唾液・胃酸・消化酵素の分泌が低下し、食欲そのものが落ちやすくなります。また以下のような要因も重なります:
- 嚥下機能の低下で食べにくい
- 持病や服薬による食欲低下
- 孤食・うつ傾向による意欲低下
- 暑さ寒さなど外環境の影響
一見「年のせい」で片付けられてしまいがちですが、適切に整えれば改善できるケースも多くあります。
漢方から見た「食欲不振」の体質分類
1. 脾気虚タイプ(胃腸の力が弱い)
- 疲れやすく、軟便傾向
- 食後に眠くなる・胃がもたれる
- 声に力がなく、顔色が淡い
代表処方:六君子湯、補中益気湯、参苓白朮散
2. 胃陰虚タイプ(潤い不足・乾燥傾向)
- 食欲はあるが少量しか食べられない
- 口の渇き・舌の乾燥
- 便秘気味・ほてりを感じる
代表処方:麦門冬湯、滋陰健脾湯、益胃湯
3. 気血両虚タイプ(全身が虚弱傾向)
- やせていて顔色が悪い
- ふらつき・動悸・立ちくらみ
- 食事量も活力も減っている
代表処方:十全大補湯、人参養栄湯
薬膳で補えるおすすめの食材
- 山薬(やまいも):胃腸を補い、元気と潤いを与える
- なつめ:甘みと温かさで脾胃を補う/おやつにも◎
- 人参・かぼちゃ:気を補う甘味素材
- 黒ごま・黒豆:腎を補い、老化防止に
- 鶏肉・卵・米:胃にやさしいたんぱく源
おすすめのメニュー例
- 山薬と鶏ささみのおかゆ
- なつめ入り茶碗蒸し
- 参鶏湯風スープ(人参・長ねぎ・生姜入り)
生活習慣での工夫
- 香りを活かす:しそ・ゆず・みょうがで食欲を刺激
- 温める:温かい飲み物・汁物で胃を冷やさない
- 時間を決めて食事:少量でも決まった時間に
- 孤食対策:声かけ・一緒に食べる工夫を
まとめ|「食べられない」は体からのSOS
高齢者の「食欲がない」は、放っておくと栄養失調・フレイル・要介護リスクへとつながりかねません。
漢方では、「食べられない状態」そのものが体力低下や臓腑バランスの乱れと考えられ、体質に応じた優しい処方や食材で、自然に整えることができます。
無理なく、やさしく栄養を補う。その第一歩を一緒に踏み出しませんか?
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