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麻酔科(ペインクリニック)と漢方の関係|慢性痛・神経痛を“証”から整える
「どこへ行っても痛みが取れない」「慢性的な神経痛や関節痛に悩んでいる」
そうした方が訪れるのが、麻酔科・ペインクリニックです。
漢方では、痛みは「気・血・水の巡りが滞ったサイン」と捉え、
一時的な鎮痛ではなく、痛みが起こる体質そのものを整えることを目指します。
この記事では、腰痛・坐骨神経痛・帯状疱疹後神経痛・慢性頭痛など、
麻酔科・ペイン領域における代表的な痛みに対して、中医学的な証分類と漢方処方をわかりやすくご紹介いたします。
中医学における「痛み」の捉え方
中医学では、痛みは「不通則痛(つうぜずすればすなわち痛む)」=
気血水の停滞や不足により、経絡の流れが阻害されることによって生じると考えます。
また、痛みの性質や部位によって、主に次のような証(体質分類)に分けられます:
- 気滞血瘀(きたいけつお):気の停滞や血のうっ滞により起こる刺すような痛み
- 寒湿痺(かんしつひ):冷えと湿気により関節や筋肉に重だるい痛み
- 風寒湿痺(ふうかんしつひ):季節性・天候に左右される移動性の痛み
- 肝腎不足(かんじんぶそく):加齢や虚弱体質による慢性痛
1. 坐骨神経痛・腰痛|「寒湿痺」「瘀血」「腎虚」タイプ
① 寒湿タイプ(冷えると痛む/重だるい)
- 独活寄生湯(どっかつきせいとう)
- 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
② 瘀血タイプ(刺すような痛み・慢性化)
- 疎経活血湯(そけいかっけつとう)
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
③ 腎虚タイプ(冷え・だるさ・疲れやすい)
- 八味地黄丸(はちみじおうがん)
- 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
2. 帯状疱疹後神経痛(PHN)|「気血両虚」「瘀血」「陰虚火旺」タイプ
① 瘀血+気虚(刺痛・慢性化・体力低下)
- 疎経活血湯(そけいかっけつとう)
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
② 陰虚火旺タイプ(寝汗・ほてり・痛みが夜間に強い)
- 知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
- 天王補心丹(てんのうほしんたん)
3. 頭痛・緊張型頭痛|「肝陽上亢」「瘀血」「気滞」タイプ
① 肝陽上亢(怒りっぽい/ストレス性/高血圧傾向)
- 釣藤散(ちょうとうさん)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
② 瘀血タイプ(固定痛/慢性/事故後)
- 通導散(つうどうさん)
- 血府逐瘀湯(けっぷちくおとう)
生活養生のポイント|痛み体質を整える食材と工夫
おすすめ食材(体を温め・巡らせる)
- しょうが・ねぎ・にんにく・黒豆・シナモン
- 黒きくらげ・なつめ・サフラン・当帰・杜仲茶
セルフケアの工夫
- 入浴や足湯で下半身を温める
- 痛みがある部位の保温と冷やさない工夫
- ストレッチや深呼吸など「気を巡らせる」習慣
まとめ|「鎮める」のではなく「整える」漢方の視点
慢性的な痛みは、鎮痛剤だけでは根本的な改善が難しいケースも多く、
その背景にある「体質の偏り=証」を見直すことが必要です。
中医学では、痛みを「経絡の詰まり」「気血の巡り不足」と捉え、
その人に合った証と処方で、根本から体を整えるという視点を持ちます。