加味逍遥散 vs 抑肝散加陳皮半夏|女性の情緒不安と自律神経失調にどう使い分ける?
更年期・PMS・イライラ・不眠…こうした症状は、現代女性にとってもはや珍しくありません。
しかし、「ホルモンバランスだから仕方ない」と諦めるのではなく、体質と心の両面にアプローチできる漢方の力を知ることで、日常の過ごしやすさは大きく変わります。
今回は、そんな女性特有の不調に対し、実際によく使われる2つの代表的処方――
加味逍遥散(かみしょうようさん)と抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)の違いと使い分けを、中医学の視点からわかりやすく解説いたします。
逍遥散とは?:女性の情緒を整えるベース方剤
加味逍遥散は、
逍遥散に牡丹皮と山梔子(別名:丹梔逍遙散)という熱を冷ます生薬を加味した構成。
「気の巡りを整えて、熱(イライラ)を冷まし、血を養う」ことを目的とした処方です。
構成生薬:
- 柴胡(さいこ)
- 当帰(とうき)
- 芍薬(しゃくやく)
- 茯苓(ぶくりょう)
- 白朮(びゃくじゅつ)
- 生姜(しょうきょう)
- 薄荷(はっか)
- 牡丹皮(ぼたんぴ)
- 山梔子(さんしし)
- 甘草(かんぞう)
特徴と適応:
・女性ホルモンの変化によるイライラ・抑うつ・不眠
・PMS(月経前症候群)、更年期障害、のぼせ、不安感
・月経不順や冷え・便秘も併発しているタイプ
気の巡りを改善する柴胡と、血を補う当帰・芍薬を中心に、
イライラや不安の原因である「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と「血虚」にアプローチします。
ストレス耐性が低く、ちょっとしたことで情緒が乱れやすい女性にとって、まさに“気持ちをほどく処方”です。
抑肝散加陳皮半夏とは?:イライラ+神経過敏を沈める処方
もともと小児の夜泣き・神経過敏を対象にした処方ですが、近年では大人のストレス性不調・イライラ・興奮にも活用され、さらに陳皮・半夏を加えた加味処方が用いられています。
構成生薬:
- 柴胡
- 当帰
- 釣藤鈎(ちょうとうこう)
- 川芎(せんきゅう)
- 茯苓
- 甘草
- 陳皮
- 半夏
特徴と適応:
・怒りっぽい、不眠、イライラ、神経質
・神経の過緊張、歯ぎしり、手足のふるえ、動悸など
・認知症初期、老年期の情緒不安にも
加味逍遥散と比べ
「実証(しっしょう)」寄りで、神経興奮や抑えきれない怒りを鎮める作用に優れています。
イライラだけでなく、自律神経の乱れによる身体症状(胃のムカムカ・動悸など)が前面に出る方におすすめです。
加味逍遥散 vs 抑肝散加陳皮半夏:どう使い分ける?
項目 | 加味逍遥散 | 抑肝散加陳皮半夏 |
---|---|---|
体質 | 虚証・血虚・気鬱タイプ | 実証〜中間証・神経過敏タイプ |
主訴 | 不安・抑うつ・月経異常・のぼせ | イライラ・怒り・不眠・動悸・神経興奮 |
適応年齢 | 20〜50代女性、ホルモン変化のある年代 | 子ども〜高齢者まで対応可 |
代表疾患 | PMS、更年期障害、自律神経失調 | 神経症、不眠、認知症初期、パニック傾向 |
作用の中心 | 肝気を整え、血を養う | 神経の昂りを鎮め、胃腸もケア |
使用事例の比較
事例1:30代女性/PMS・感情の起伏が激しいタイプ
月経前になると気分が落ち込んだり、急に怒りっぽくなったり…。加味逍遥散を継続服用することで、月経前の情緒の乱れが和らぎ、冷え・のぼせも改善。
事例2:50代女性/更年期・不眠と神経過敏
小さな音で目が覚め、動悸・息苦しさもあり、日中もイライラしやすい。抑肝散加陳皮半夏で中枢の興奮が和らぎ、睡眠の質が向上。
漢方選びは「体質と症状の重なり」をみる
漢方は、症状そのものを見るだけでなく、「なぜそれが起きているのか」「体全体のバランスはどうなっているのか」をみて処方を決めます。
- ✔ 気持ちが沈む・落ち込みやすい・疲れやすい → 加味逍遥散
- ✔ 怒りっぽい・興奮しやすい・眠れない → 抑肝散加陳皮半夏
どちらも「女性のための漢方」として実績のある処方です。
大切なのは、「どちらが効くか」ではなく、「どちらが今の私に合っているか」。
最後に|お悩みは一人で抱えずに
更年期やPMS、不定愁訴は「気のせい」にされがちですが、体の声を無視せず、正しくケアすることが何より大切です。
「私にはどっちが合っているの?」と迷ったら、ぜひご相談ページからお気軽にご連絡ください。体質診断チャートやLINE相談もご活用いただけます。