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夜泣き・寝つきの悪さに|子どもの不眠を整える漢方と体質ケア
「夜中に突然泣き出す」「なかなか寝つけず親も寝不足」――
小児の夜泣きや睡眠トラブルは、子ども本人だけでなく家族全体の健康や生活リズムに大きな影響を与えます。
西洋医学では「成長の一部」「様子を見ましょう」とされることが多いですが、中医学(東洋医学)では“体質のアンバランス”による心神(しんしんorしんじん)の不安定さと捉え、やさしいアプローチで改善を図ることができます。
この記事では、夜泣き・寝つきの悪さの背景にある体質タイプと、それに対応する漢方・薬膳・家庭でのケア法を薬剤師×国際中医師の視点で解説します。
中医学における「子どもの不眠」の捉え方
中医学では「心は神を蔵す」とされ、睡眠の質は心と神(精神)の安定に関係しています。
子どもは成長途上であるため、臓腑の働きが未熟で気血(きけつ)のバランスが崩れやすく、以下のような状態になると「心神不寧(しんしんorしんじん/ふねい)」=心が落ち着かない状態に陥ります。
子どもの不眠に多い3つの体質タイプ
① 心脾両虚(しんぴりょうきょ)タイプ
- 寝つきが悪く、眠りが浅い
- 日中も疲れやすく元気がない
- 食が細く、軟便気味
代表処方:帰脾湯、加味帰脾湯
② 肝火上炎(かんかじょうえん)タイプ
- 感情の起伏が激しく、イライラしやすい
- 寝る直前まで興奮している
- 顔が赤く、ほてりや口の渇きもある
代表処方:抑肝散、竜胆瀉肝湯
③ 陰虚火旺(いんきょかおう)タイプ
- 夜中に何度も目が覚める
- 寝汗が多い
- 舌が赤く、乾燥している
代表処方:天王補心丹、酸棗仁湯
薬膳でできる「眠れる体」づくり
1. 精神を安定させる食材
- なつめ:気血を補い、安心感をもたらす
- 百合根:肺と心を潤し、落ち着きを促す
- クコの実:肝と腎を補って成長もサポート
2. 陰を補って熱を鎮める
- 白きくらげ:体を潤し、睡眠の質を高める
- 麦門冬:陰を補い、イライラ・乾燥を鎮める
おすすめメニュー
- なつめと百合根のおかゆ
- 白きくらげと梨の甘煮
- 鶏ささみと長芋のやさしい煮物
生活でできる睡眠サポートの工夫
1. 入眠前のルーティンを整える
- 寝る1時間前からテレビやゲームは控える
- 絵本の読み聞かせ・優しい音楽でクールダウン
2. 寝室環境の最適化
- 室温:20〜22℃/湿度:50〜60%
- 静かな環境、適度な暗さを保つ
3. 親子で一緒に深呼吸
- ゆっくり鼻から吸って、口から吐く
- 「ふーっ」と息を吐くだけでも副交感神経が働きます
まとめ|子どもの眠れない“理由”に寄り添うことから
「寝ない」「起きる」が繰り返される夜。
大人もイライラしてしまいがちですが、それはお子さんの“未熟な体”からのサインかもしれません。
漢方や薬膳は、眠れない原因を体質としてとらえ、叱るのではなく、整えるというやさしい方法です。
まずはできることから。
心と体の安心感を、日々の中に少しずつ取り戻していきましょう。