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精神科と漢方の関係|不安・うつ・パニックに効く処方と“心神”を整える体質アプローチ
「眠れない」「気分が落ち込む」「人前で緊張して動悸が出る」
このような不調を感じたとき、多くの方は精神科や心療内科を思い浮かべるかもしれません。
しかし、“心の不調”は“体の不調”でもあるというのが、漢方=中医学の考え方です。
感情と臓腑は密接に関係し、「五臓と心神(しんしん)」のバランスが乱れると心身の不調が現れるとされます。
この記事では、不眠・不安・うつ・パニックなどの精神科領域に多い症状に対して、
体質に基づいた中医学的アプローチと代表的な処方を丁寧にご紹介いたします。
中医学で見る「心神(しんしん)」と精神的な症状の関係
五臓のうち「心・肝・脾・腎」は精神と深く関係しています。
- 心:精神活動を主る。心神安定が重要。
- 肝:気血の流れと情緒コントロール(怒・緊張)を担当。
- 脾:思慮と消化吸収。思い悩むと胃腸も乱れる。
- 腎:生命エネルギーと脳・神経系を支える。
つまり「心の不調」は、気血の不足・巡りの滞り・五臓のバランスの崩れによって引き起こされると捉えるのです。
主な症状と体質別のアプローチ
① 不安・焦燥感・動悸がつらい|心血不足・心脾両虚タイプ
症状:寝つきが悪い/動悸/不安感/疲れやすい/顔色が白い
- 加味帰脾湯(かみきひとう)
- 酸棗仁湯(さんそうにんとう)
② イライラ・怒りっぽい・落ち着かない|肝気鬱結・肝火上炎タイプ
症状:情緒不安定/怒りっぽい/胸の張り/頭痛/不眠
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
③ 抑うつ傾向・無気力・過眠|気血両虚・腎陽虚タイプ
症状:気力が出ない/眠い/むくみ/冷え/腰がだるい
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 八味地黄丸(はちみじおうがん)
④ 緊張・パニック・不眠・夢が多い|心腎不交・陰虚火旺タイプ
症状:胸がざわつく/寝汗/動悸/多夢/寝ても疲れが取れない
- 天王補心丹(てんのうほしんたん)
- 知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
体質改善を促す薬膳素材
気と血を補う素材(心血不足・心脾両虚)
- なつめ・クコの実・黒ごま・百合根・鶏肉・卵黄
気を巡らせる素材(肝気鬱結)
- みかんの皮(陳皮)・しそ・ミョウガ・香味野菜
腎を補う素材(気血両虚・腎虚)
- 黒豆・山芋・くるみ・羊肉・栗
おすすめレシピ例
- 黒豆とクコの滋養スープ
- 百合根となつめの薬膳粥
- 鶏肉と生姜の滋養スープ
まとめ|“心の不調”も“体から整える”漢方的視点
精神的な症状に対して、「気持ちの問題」と片づけてしまうのではなく、
中医学では“体からのサイン”として捉え、五臓の調整や体質改善を目指します。
西洋医学との併用も可能であり、日々の不安感や不眠、気分の落ち込みに悩む方は、
ぜひ自分の証を知り、心身のバランスを整える第一歩を踏み出してみてください。