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更年期の“ほてり”と漢方 – 腎陰虚への中医的アプローチ
はじめに
「顔が急に熱くなる」「寝汗で夜中に目が覚める」—— これは多くの女性が経験する更年期の“ほてり”と呼ばれる症状です。
西洋医学では「更年期障害」と呼ばれますが、中医学(漢方)では「腎陰虚(じんいんきょ)」という体質的な問題としてとらえ、体の内側から整える方法が重視されます。
更年期と中医学の関係
中医学では、更年期を「腎気の衰え」による生理的な変化と考えます。特に「腎陰虚」が進むことで、体に必要な潤いや冷却作用が不足し、ほてりや発汗、イライラなどの症状が現れます。
腎陰虚の主なサイン
- 顔や手足のほてり、のぼせ
- 寝汗、口の乾き
- 耳鳴り、腰や膝のだるさ
- 不眠、動悸、イライラ
- 月経周期の乱れ(先期・不定期)
腎陰虚に対する中医学的ケア
中医学では、腎陰虚に対して「滋陰補腎(じいんほじん)」という方法で、失われた潤いとエネルギーを補う治療が行われます。
1. 食事でのサポート
- 黒ごま、黒豆、山芋、クコの実など、腎を補う食材
- 豆腐や豆乳など、植物性たんぱく質を積極的に
- 辛いものやアルコールは控えめにして、体内の熱を抑える
2. 生活習慣の見直し
- 適度な運動で血行を促進し、リラックス
- 夜更かしを避け、質の良い睡眠を確保
- ストレスをためず、深呼吸や瞑想を取り入れる
漢方薬でのアプローチ
腎陰虚による更年期のほてりには、以下のような漢方薬が用いられます。
- 左帰飲(さきいん)
腎陰を補い、身体のバランスを整える基本処方。ほてり、寝汗、疲れやすさに。 - 二至丸(にしがん)
腎と肝を同時に補い、イライラや目の乾き、のぼせにも対応。 - 知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
腎陰虚の熱を冷ます力が強く、特にほてりが強い場合に使用されます。
漢方薬は、症状や体質に応じて適切に選ぶ必要があります。専門家の診断を受け、自分に合った処方を見つけることが大切です。
まとめ
更年期のほてりは、単なる不快感ではなく、体からの大切なサインです。
中医学では、体質を整えながら症状をやわらげ、無理なく過ごすことを重視します。
腎陰虚に対する食事や生活習慣、そして漢方の力を取り入れて、更年期を健やかに乗り越えましょう。