ストレスでお腹がゆるくなるあなたへ|“肝鬱脾虚”の整え方と食養生

ストレスでお腹がゆるくなるあなたへ|“肝鬱脾虚”の整え方と食養生

「ストレスがかかると、すぐにお腹が痛くなる」「食べるとすぐ下してしまう」「緊張するとトイレが近くなる」──そんな症状に悩まされていませんか?
現代医学では「過敏性腸症候群(IBS)」などに分類されるこれらの不調は、中医学では「肝鬱脾虚(かんうつひきょ)」という証で捉えられます。
本記事では、ストレスが消化機能に及ぼす影響を中医学的に解説し、漢方薬・薬膳・ツボ刺激によるセルフケアまで丁寧にご紹介いたします。

 

 

現代医学の視点:ストレスによる自律神経と腸の関係

過敏性腸症候群(IBS)に代表される「心因性の腹部不調」は、自律神経の乱れが関係しています。
ストレスや不安が加わると交感神経が優位になり、腸の運動が異常に活発化したり、腸管内の痛覚過敏が引き起こされたりします。
下痢や腹痛、軟便、腹鳴などを伴い、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

中医学での見立て:「肝鬱脾虚(かんうつひきょ)」とは

中医学では、ストレスは「肝」の疏泄機能を損ない、気の巡りを滞らせます。
その結果、「肝気」が「脾」に干渉し、消化機能が低下して「脾虚」が生じる状態──それが「肝鬱脾虚」です。

 

 

主な症状

  • ストレスで腹痛や下痢を起こしやすい
  • 食欲の波がある/胃が重く張る
  • 便が軟らかく形が安定しない
  • ため息・イライラ・不眠
  • 疲れやすく、元気が出ない

 

 

証分類と体質タイプ

証名 特徴
肝鬱脾虚 ストレスがかかると消化器に不調が出る/神経性の下痢傾向
肝脾不和 より虚弱体質に多く、下痢とともに全身の疲労感を伴う

処方選択:肝と脾を同時に整える漢方薬

逍遥散(しょうようさん)

ストレスによる気滞と脾虚のバランスをとる基本方剤。虚弱体質に向いています。

加味逍遥散(かみしょうようさん)

上記に清熱作用を加え、イライラ・不眠・熱感があるタイプに適します。

香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)

胃もたれ・膨満感が強い方、胃腸の冷えが目立つ方に。気滞と脾胃虚弱の両方をケア。

✅薬膳セルフケア|気と脾を整える日々の食養生

おすすめの薬膳素材

分類 食材例
気の巡りを促す 陳皮、しそ、セロリ、柑橘類、ジャスミン茶
脾を補う 山芋、はとむぎ、かぼちゃ、なつめ、もち米
胃腸を温める しょうが、黒砂糖、桂皮
情緒を和らげる 菊花、クコの実、紅花少量

薬膳レシピ例

  • 陳皮と山芋の炊き込みご飯:香りと滋養で胃腸をサポート
  • しょうがとなつめの薬膳スープ:体を温めながら気の巡りを促進
  • しそとジャスミンの薬膳茶:食後に気を流し、気持ちを整える

 

 

✅経絡セルフケア|肝と脾のバランスを整えるツボ刺激

ツボ名 作用 位置と探し方
太衝(たいしょう)
【肝経】
気の巡りを促し、情緒を安定させる 足の甲、親指と人差し指の骨が交差するくぼみ。押すとやや痛気持ちよい場所。
足三里(あしさんり)
【胃経】
胃腸を強化し、全身の活力を補う 膝のお皿の外下縁から指4本分下、スネの外側のくぼみ。
中脘(ちゅうかん)
【任脈】
胃の機能を整え、食欲不振や胃の重さに対応 みぞおちとへそのちょうど中間点。仰向けで探すと押しやすい。
内関(ないかん)
【心包経】
不安感、ストレス、胃腸の緊張を緩和 手首内側のしわから指3本分ひじ寄りにあるくぼみ。

セルフケア方法(初心者向け)

  1. 太衝: 朝・夜にゆっくり3分間押圧
  2. 足三里: 食後や就寝前に円を描くようにマッサージ
  3. 中脘: 食前に手のひらで温めるように10秒×3回
  4. 内関: 緊張・不安を感じたときに軽く圧迫し深呼吸

まとめ:気持ちもお腹も、ゆっくり整える習慣を

ストレスによるお腹の不調──それは「肝」と「脾」のアンバランスが表面化したサインです。
中医学では、心と体はひとつながり。漢方・薬膳・ツボケアを取り入れることで、あなた本来の穏やかさと健やかさを取り戻すことができます。
今日からできるケアを一歩ずつ始めてみましょう。

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