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転倒予防のカギは“腎”にあった?|足腰の弱りに対応する漢方と生活の工夫
高齢者の転倒は、骨折や寝たきりの原因となる重大な健康リスクです。
特に「つまづきやすい」「階段が不安」「脚がもつれる」といった変化は、加齢による“足腰の弱り”のサインかもしれません。
中医学では、「腎は骨を司る」「腎は精を蔵す」とされ、足腰の力やバランス感覚は“腎”の働きと深く関わっています。
この記事では、漢方的な視点から見た足腰の衰えの原因、体質別の漢方処方、そして日常でできる転倒予防のための生活養生をわかりやすく解説します。
なぜ足腰が弱るのか?|中医学の視点から
加齢にともない「腎精(じんせい)」が減少し、筋力・骨・平衡感覚が衰えていきます。
腎虚(じんきょ)による影響
- 足腰のだるさ、重さ
- 膝がカクッとなる、ふらつき
- 骨密度の低下、関節痛
- 耳鳴り・白髪・頻尿なども伴いやすい
これらはすべて「腎の衰え=老化のサイン」と考えられ、転倒の前兆として捉えられます。
転倒予防に用いられる代表的な漢方処方
① 八味地黄丸(はちみじおうがん)
加齢による腎の衰えに対応する補腎薬の代表。
足腰のだるさ、頻尿、耳鳴り、冷えを伴う人に。
② 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
八味地黄丸に利水・補筋骨作用を加えた処方。
下肢のむくみ、しびれ、膝の痛みに。
③ 杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
腎精を補い、目・耳・脳を同時にサポート。
加齢による衰え+視力・平衡感覚の低下がある場合に。
④ 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
足がもつれる、階段がつらい、疲れやすい――気虚タイプの足腰の弱りに。
足腰を強くする薬膳素材
補腎作用のある食材
- 黒ごま・黒豆:腎精・筋骨を補う
- 山薬(やまいも):脾腎を補い、元気と安定を与える
- クルミ:腰のだるさ・筋力低下に
- 鶏肉・羊肉:体を温めて筋力を支える
おすすめメニュー
- 黒ごまと山芋のとろみスープ
- クルミ入り雑穀粥
- 鶏肉とほうれん草の中華風炒め
日常生活での転倒予防ポイント
1. 足腰を鍛える軽運動
- かかとの上げ下げ運動
- ゆっくりしたスクワット
- 散歩・ラジオ体操・太極拳
2. バランス感覚を整える
- 片足立ち(安全な場所で)
- ゆっくり歩く練習
3. 環境を見直す
- 段差の解消・滑り止めマットの活用
- トイレ・廊下・浴室に手すり設置
まとめ|“転ばない体”は「腎」から育てる
転倒は、たった一度でも人生を大きく変えるリスクがあります。
だからこそ、「転ばない体をつくる」ことが大切なのです。
漢方は、足腰の衰えの背景にある“腎の力”を補い、体の内側から立て直すことを目的としています。
冷え、頻尿、ふらつき、筋力の低下――
これらはすべて、転倒の前ぶれです。
今日からできる養生と、体質に合った処方で、転ばない身体づくりを始めてみませんか?
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