不安になりやすい人へ|「心神不寧」と漢方ケアのすすめ
「寝る前になると不安が押し寄せる…」「人前に出るとドキドキしてしまう」
現代では、不安感や緊張、気持ちの落ち込みに悩む方が増えています。
中には「性格だから仕方ない」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、
中医学(東洋医学)では、不安・緊張といった“こころの状態”も体のバランスの崩れと密接に関係していると考えられています。
この記事では、「心神不寧(しんしんふねい)」という体質概念を中心に、不安体質に合った漢方・薬膳・セルフケア法を薬剤師 × 国際中医師の視点でやさしく解説いたします。
中医学で見る「不安」の正体とは?
中医学では、「心は神を蔵す」といい、“神”=精神や思考、意識の安定は「心(しん)」の働きに大きく依存しています。
この心が弱ったり、気血が不足したりすると、神が落ち着かず“不安・不眠・動悸・緊張”などの症状が現れます。
この状態を「心神不寧(しんしんふねい)」と呼びます。
あなたは「心神不寧タイプ」?セルフチェック
次のような症状が当てはまる方は、心神不寧の傾向があるかもしれません。
- 不安感が強く、落ち着かない
- 寝つきが悪い、夢をよく見る、夜中に目が覚める
- 些細なことで緊張する、動悸がしやすい
- 驚きやすい、涙もろい
- 考えすぎて疲れやすい
これは単なる「性格」ではなく、心・脾・腎の働きのアンバランスとして捉えることができます。
心神不寧タイプに用いられる代表的な漢方
① 酸棗仁湯(さんそうにんとう)
不眠・不安・精神疲労に。心と肝のバランスを整えて安眠へ導きます。
② 天王補心丹(てんのうほしんたん)
心と腎の陰虚を補い、焦りや動悸、不眠に効果的。疲れやすいタイプにも。
③ 加味帰脾湯(かみきひとう)
不安・集中力低下・夢を多く見る方に。脾虚(胃腸虚弱)+心血不足タイプに最適。
④ 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
緊張・イライラ・怒りと不安が混在するタイプに。気逆を鎮める処方。
心を落ち着ける薬膳素材
1. 神を養う食材
- なつめ:気と血を補い、心を安定させる
- 百合根:緊張をやわらげ、眠りの質を高める
- クコの実:肝と腎を補い、心神の安定に
2. 陰を補い、熱を鎮める食材
- 白きくらげ:潤して興奮を鎮める
- 麦門冬:口の渇き・イライラに
おすすめレシピ
- なつめと百合根のお粥
- クコの実と卵のスープ
- 白きくらげと梨のやさしい煮物
心を安定させるセルフケアの工夫
1. 呼吸とリズムを整える
- 深呼吸で副交感神経を働かせる
- 就寝前のルーティン(照明・音楽・読書)を固定する
2. 五感で鎮静する
- アロマ(ラベンダー・カモミール)
- 温かいハーブティー・入浴など
3. 気持ちを整える漢方の考え方を持つ
- 「不安」は体からのメッセージ
- 感情を責めず、休むことを肯定する
まとめ|「不安」は体質の調整でやわらぐ
不安になりやすい、眠れない、落ち着かない――
そんな「こころの揺らぎ」は、決して“気のせい”ではなく、体の声なのかもしれません。
中医学では、心・脾・腎などの働きを整えることで、不安や緊張の感情を自然に落ち着けていくことを目指します。
「性格」として片づけず、やさしく体を整えることから、はじめてみませんか?