八味地黄丸|頻尿・むくみ・冷え・腰痛に──腎陽虚を温める“補腎温陽”の基本処方

八味地黄丸|頻尿・むくみ・冷え・腰痛に──腎陽虚を温める“補腎温陽”の基本処方

頻尿、冷え、腰のだるさ、夜間尿、下肢のむくみ──これらは「腎陽虚」が背景にあるかもしれません。
八味地黄丸は、補腎薬の原点であり、現代でも高齢者の排尿トラブルや下肢の冷えに広く使われる温補腎陽剤です。
本記事では薬剤師向けに構成、証、服薬指導、製剤比較、副作用、他処方との比較を一括で解説いたします。

 

 

🧠 処方名の由来

「八味地黄丸」は、補腎陰の三薬(地黄・山茱萸・山薬)に、瀉火利湿の三薬(沢瀉・茯苓・牡丹皮)、さらに温陽の二薬(桂枝・附子)を加えた8味構成。
「八味」とは薬味の数を指し、「地黄」が中心薬であることからこの名が付きました。

 

 

📘 基本情報と構成生薬

  • 名称:八味地黄丸(はちみじおうがん)
  • 出典:『金匱要略』(張仲景)
  • 分類:補腎温陽剤
  • 構成生薬:地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、茯苓、牡丹皮、桂枝、附子

 

🔍 主治と治法

  • 主治腎陽虚による頻尿、夜間尿、腰痛、冷え、下肢のむくみ・しびれ・排尿困難、疲労倦怠
  • 治法温補腎陽・利水通絡

 

 

🧪 ユニット構造と配合意図

  • 地黄+山茱萸+山薬:補腎陰・益精
  • 沢瀉+茯苓+牡丹皮:瀉火利水・滋陰清熱
  • 桂枝+附子:温陽・通経絡・助腎陽

陰陽バランスの補正を目指した「温補+清利」構成。

 

 

🔬 配合理論と証の成立

  • 相須:桂枝×附子(温陽)、地黄×山茱萸(滋腎)
  • 相使:沢瀉×茯苓(利湿)、牡丹皮(瀉火)

証型:腎陽虚+水湿停滞。老化・疲労・冷え体質による機能低下に。

 

📌 証と適応判断

  • 適応:夜間頻尿、腰痛、膝関節の冷えとだるさ、浮腫、排尿困難、疲れやすい、手足の冷え
  • 舌:淡・胖・白苔/脈:沈・遅・無力
  • NG:陰虚火旺、実熱、便秘、顔面紅潮・のぼせタイプ

 

📊 和漢製剤と中医学の違い

日本では「高齢者の頻尿・冷え・疲労・排尿トラブル」に広く処方。
中医学では「腎陽虚」に対応する温補腎陽の基本方剤として、尿量減少・陽萎・不妊・下肢無力など多様な症状に用いられます。

 

 

📦 製剤別の比較とOTC入手

  • ツムラ:7番(八味地黄丸エキス顆粒:医療用)
  • クラシエ:医療用・OTC(第2類)両方あり
  • 小太郎:丸剤タイプも存在。煎剤風味を再現
  • OTC:複数社から市販され、薬局・通販にて入手可

※PMDA・図解トリセツ・公式サイトにて確認済(2024)

 

 

 

💊 副作用と注意点

  • 附子:動悸、発汗、のぼせに注意(体質適応確認)
  • 地黄:胃もたれ・下痢傾向のある人には慎重投与
  • 腎機能が低下している方は水分バランスに留意

 

 

🔁 他処方との鑑別・類方比較

  • 六味丸:陰虚証に用い、熱感・尿黄・口渇が主体
  • 牛車腎気丸:八味地黄丸+牛膝・車前子で利水・しびれ・通絡作用を強化
  • 真武湯:寒湿+脾腎陽虚で、下痢・むくみ・悪寒が強いとき

 

 

👨‍⚕️ 服薬指導のポイント

  • 「夜間トイレが近い」「寒いと腰が痛む」「冷えて疲れる」方へおすすめ
  • 温服の推奨/効果実感は2〜4週を目安に
  • 利尿効果により脱水注意。水分指導・セルフケアアドバイスとセットで

 

 

🧾 使用例と処方医の意図

  • 夜間頻尿+冷え性の高齢者
  • 前立腺肥大・糖尿病などでの腎機能低下
  • 下肢冷感・しびれ・疲労倦怠を訴える中年〜高齢者

 

 

🔚 まとめ|腎陽を補い、下半身を温める“補腎温陽”の基本処方

八味地黄丸は、腎陽虚による頻尿・冷え・倦怠・下肢のむくみなどに対応する温補腎陽の標準処方です。
高齢者・男性・糖尿病患者など幅広く使われる処方であり、牛車腎気丸などの派生方の理解にも不可欠です。
薬剤師としては、適応の見極めとともに、生活習慣(冷え・水分・睡眠)へのアドバイスも加えた服薬支援が信頼につながります。

 

この記事の分類

体の部位分類: 足・膝
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