補剤3兄弟を比較!補中益気湯・十全大補湯・六君子湯の違いとは?

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補剤3兄弟を比較!補中益気湯・十全大補湯・六君子湯の違いとは?

「なんとなく全部“元気を補う”漢方だけど、どれを選べばいいの?」
そんな疑問を感じたことはありませんか?

中医学における補剤は、体力の低下や慢性疲労、消化機能の衰えなど、現代人の不調に多く使われる定番処方です。今回はその中でもよく処方される、補中益気湯・十全大補湯・六君子湯を比較し、それぞれの使いどころ・証の違い・構成の工夫を中医学の観点から読み解きます。


🧭 3つの補剤の立ち位置とは?

処方名 主な適応 証タイプ
補中益気湯 慢性疲労、内臓下垂、虚弱体質 気虚+中気下陥
十全大補湯 術後の回復、慢性疾患、虚弱 気血両虚+やや寒証
六君子湯 食欲不振、胃もたれ、疲労感 脾胃気虚+痰湿

🔬 共通点と違いを成分で見る

3つの処方は、いずれも「気を補う」ことを基本としますが、その補い方に特徴があります。

💊 補中益気湯

  • 主な構成:人参、白朮、黄耆、当帰、陳皮、柴胡、升麻、甘草、生姜、大棗
  • 特徴:中気下陥を引き上げる升麻・柴胡を含み、気を補いながら持ち上げる設計。
  • 応用:倦怠感、内臓下垂、産後の体力回復など。

💊 十全大補湯

  • 主な構成:四君子湯+四物湯+黄耆・桂皮
  • 特徴:気血両虚+寒証に対応。身体を温めながら、バランスよく補う。
  • 応用:術後・病後の回復、虚弱体質、貧血、冷え。

💊 六君子湯

  • 主な構成:四君子湯+陳皮・半夏
  • 特徴:脾胃虚弱+痰湿に。消化機能と水分代謝の改善が狙い。
  • 応用:胃のつかえ、食欲不振、軟便、疲れ。

🔍 症例別!どれを選ぶ?

  • 👩‍💻 デスクワークで疲れが抜けない・食欲不振 → 六君子湯
    胃腸の動きが悪く、水分代謝も落ちている状態。
  • 👨‍🦳 慢性疾患や手術後の回復 → 十全大補湯
    貧血・冷えも伴う、しっかり補う必要があるケース。
  • 👩‍👧 産後の疲れ・内臓下垂・めまい → 補中益気湯
    下垂感・脱力感などが主訴の場合に。

🧠 鑑別ポイントまとめ

  • 脾胃中心・痰湿:六君子湯
  • 気虚+中気下陥:補中益気湯
  • 気血両虚+寒:十全大補湯

「疲れやすいから補剤」で済ませず、その疲労がどこから来ているか?まで読み取ることが、処方選択のカギです。


📘 補剤の設計思想を学ぼう

中医学では「補うだけでは不十分」とされることが多く、補いながら巡らせる(理気)・温める(温補)・痰湿を除く(化湿)などの併用が重要視されます。

今回の3処方もその典型。単なる“栄養補給”とは一線を画す補剤の奥深さを感じていただけたのではないでしょうか。


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