半夏瀉心湯 vs 六君子湯|胃もたれ・食欲不振の証で選ぶ処方

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半夏瀉心湯 vs 六君子湯|胃もたれ・食欲不振の証で選ぶ処方

「食べたあとに胃が重たい」「なんとなく食欲がわかない」——

そんな慢性的な胃腸の不調に、漢方は体質ごとのアプローチで応えてくれます。
今回ご紹介するのは、胃腸虚弱タイプに用いられる代表方剤 「六君子湯(りっくんしとう)」と、胃内停水・中焦不和といった機能的な乱れに効果的な 「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」

どちらも“胃腸の悩み”に用いられますが、使うべき状況や体質像は大きく異なります。
本記事では、それぞれの処方の構成と適応、見極めのポイントを比較しながら詳しく解説していきます。

 

六君子湯とは?|虚証タイプの「胃腸虚弱」に

六君子湯は、慢性的な食欲不振、胃のもたれ、疲労感などを訴える「脾気虚(ひきききょ)」タイプに使われる補気剤です。
体力が低下して消化吸収の力が弱まり、食べ物を処理しきれなくなっている状態を整えていきます。

構成生薬

  • 人参(補気健脾)
  • 白朮(補気健脾)
  • 茯苓(利水安神)
  • 甘草(調和諸薬)
  • 半夏(燥湿化痰)
  • 陳皮(理気化痰)
  • 生姜・大棗(補中和胃)

適応の目安

  • 胃もたれが慢性化している
  • 疲れやすく、食欲も落ちがち
  • 顔色が悪く、舌が白くて歯痕がある
  • 痰が多く、冷えを伴うことが多い

「胃腸が弱くて元気が出ない」そんな方の体を根本から整える処方です。

半夏瀉心湯とは?|中焦不和・停水タイプに

半夏瀉心湯は、みぞおちの痞え(つかえ)やゲップ、嘔吐、軟便などを伴う「胃内停水・寒熱錯雑」タイプに向いています。
特に、ストレスや暴飲暴食などで胃腸の調和が乱れ、「胃のあたりが張る・苦しい・水が溜まっているような感じ」がある人に効果的です。

構成生薬

  • 半夏(降逆止嘔)
  • 黄連(清熱燥湿)
  • 黄芩(清熱燥湿)
  • 乾姜(温中散寒)
  • 人参(益気健脾)
  • 甘草(調和諸薬)
  • 大棗(補中益気)

適応の目安

  • みぞおちが張って不快(胃内停水)
  • ゲップ・吐き気・口内の苦味
  • 水分の消化がうまくできない
  • 下痢と便秘を繰り返すタイプ
  • 舌苔が黄白、舌辺に赤み

「胃腸がつかえている」「水分をさばけない」そんなときに使うとよく効く処方です。

両処方の違いと使い分けポイント

比較項目 六君子湯 半夏瀉心湯
主な証 脾気虚(虚証 中焦不和・寒熱錯雑(実熱混合)
胃の不快感 慢性のもたれ・消化不良 みぞおちの痞え・つかえ
便の状態 軟便、食後に下痢 下痢と便秘の繰り返し
適応者 胃腸が弱くて食欲がない人 ストレスや水分過多の不調がある人

補足:現代医学と併用できるのか?

どちらも比較的穏やかな処方であり、消化器科での投薬と併用される例も多いです。
ただし、六君子湯は補気作用があるため高血圧や浮腫がある方は注意。
半夏瀉心湯は清熱と温中の生薬を含むため、過度の服用で胃を冷やす可能性もあります。

私の経験談から一言

「胃が弱くて何を食べてももたれる」という方には六君子湯を、
「飲みすぎ・食べすぎ・ストレスが溜まって不調」という方には半夏瀉心湯をおすすめしています。
胃腸の声をしっかり聞いて、必要な処方を選ぶこと。それが漢方の基本です。

参考リンク