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六君子湯|胃腸が弱い・食欲がない・胃がつかえる…そんな方へ“補気+理気+化痰”の定番処方
食欲不振、胃もたれ、倦怠感、軟便、胃内停水──こうした「脾胃虚弱+痰湿」の体質に対応するのが六君子湯です。
四君子湯に半夏・陳皮を加えた構成で、補気・健脾・理気・化痰を同時に行う、多機能型の代表処方です。
本記事では、薬剤師として服薬指導や処方意図を理解しやすくなるよう、13の章で構造・証・鑑別・副作用・製剤比較まで一括で解説します。
🧠 処方名の由来
「六君子湯」は、四君子湯(人参・白朮・茯苓・甘草)に、半夏と陳皮を加えた6薬から構成されます。
「六人の君子」という意味で、中庸で調和的な六つの薬が脾胃を立て直す処方という意味合いを持ちます。
📘 基本情報と構成生薬
- 名称:六君子湯(りっくんしとう)
- 出典:『医学発明』
- 分類:補気・健脾・理気・化痰剤
- 構成生薬:人参、白朮、茯苓、甘草、半夏、陳皮
🔍 主治と治法
🧪 ユニット構造と配合意図
- 人参+白朮+茯苓+甘草:補気健脾(四君子構成)
- 半夏:化痰止嘔・胃内停水の解消
- 陳皮:理気和中・気滞による胃のつかえを改善
「補気」「理気」「化痰」を一体化し、胃腸機能を総合的に立て直す設計です。
🔬 配合理論と証の成立
- 相須:人参×白朮=補中益気
- 相使:半夏×陳皮=胃内停水+気滞解消
証型:脾胃気虚+痰湿内盛(舌:淡・白膩苔/脈:濡・緩)
📌 証と適応判断
- 適応:食欲不振、胃もたれ、吐き気、軟便、胃の膨満感、胃が弱い、気力が出ない
- NG:実熱、肝鬱気滞(怒り・イライラ中心)、過度の冷え性には慎重投与
📊 和漢製剤と中医学の違い
中医では「脾気虚+痰湿+胃内停水」を治す基本処方。
日本では虚弱体質・小児・高齢者・術後などの「食欲がない・胃腸が弱い」症状の改善に広く用いられています。
📦 製剤別の比較とOTC入手
- ツムラ:43番(顆粒/エキス製剤)
- クラシエ:錠剤・顆粒の選択肢あり
- 小太郎:煎じ重視。構成の調整や組み合わせ例も豊富
- OTC:市販品あり。第2類医薬品として入手可能
💊 副作用と注意点
- 半夏:吐き気・咽喉刺激など。過量注意
- 甘草:浮腫・高血圧(長期高用量で)
- 体質により陳皮が胃刺激となるケースも
🔁 他処方との鑑別・類方比較
- 四君子湯:痰湿・胃内停水の症状がない場合に
- 補中益気湯:脾気虚+内臓下垂・疲労感が強いとき
- 参苓白朮散:下痢・湿盛傾向が強い場合に
👨⚕️ 服薬指導のポイント
- 「食が細く胃がもたれる」「口数が減ってきた」「疲れて胃腸が動かない」──そんな患者にフィット
- 食前服用・温服の推奨/1〜2週間での変化実感の目安
- 高齢者・術後・小児の長期補剤としても安心して案内可
🧾 使用例と処方医の意図
- 食欲不振+胃のつかえがある高齢者
- 胃腸機能が落ちてきた術後患者
- 小児の体質改善・成長期の虚弱体質に
🔚 まとめ|“気”と“胃腸”をまとめて立て直す、中庸の名方
六君子湯は、気虚にともなう胃腸症状を整えるための万能補剤です。
単なる補気にとどまらず、“痰湿や停滞”を見据えた構成を持つため、多くの補剤の基礎と応用展開の中心に位置します。
薬剤師としては、舌診・胃腸症状・便調・食欲を丁寧に聞き取り、「ただの滋養強壮」ではない理気・化痰の意図を伝えることで、信頼ある服薬指導を提供してまいりましょう。