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柴胡清肝湯|小児の夜泣き・いらいら・皮膚炎──“肝熱上擾”に応える清肝疏肝の名処方
夜泣き、かんしゃく、落ち着きのなさ、皮膚の赤みやかゆみ──それは「肝熱上擾」のサインかもしれません。
柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)は、肝の過剰な活動を鎮め、精神・皮膚・自律神経の乱れに対応する処方です。
本記事では、薬剤師向けに構成・証・小児適応・服薬指導・副作用・鑑別まで丁寧に解説いたします。
🧠 処方名の由来
柴胡を中心に「肝を清す」目的で設計されたため「清肝」という語がつけられています。
肝熱・肝鬱・肝風といった「肝の過剰な動き」を鎮めることを目指した処方名です。
📘 基本情報と構成生薬
- 名称:柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)
- 出典:一貫堂方
- 分類:清肝瀉火・疏肝解鬱剤
- 構成生薬:柴胡、黄芩、当帰、釣藤鈎、山梔子、茯苓、川芎、甘草、蒼朮、連翹、石膏
🔍 主治と治法
🧪 ユニット構造と配合意図
- 柴胡+黄芩+釣藤鈎:疏肝解鬱・清熱・鎮痙
- 連翹+山梔子+石膏:清熱解毒・瀉火
- 当帰+川芎:養血活血・安神
- 茯苓+甘草+蒼朮:健脾化湿・安中和中
“肝火・肝風”の動揺を、気・血・熱・水の4つの側面から多面的に沈静化する構成です。
🔬 配合理論と証の成立
- 君薬:柴胡(疏肝・解鬱)
- 臣薬:黄芩・釣藤鈎・連翹(清熱瀉火・鎮静)
- 佐薬:山梔子・石膏・茯苓・蒼朮・当帰・川芎
- 使薬:甘草(調和諸薬・補中)
- 証型:肝熱内擾・肝気鬱結・血熱風動・小児の神経不安・湿熱体質
📌 証と適応判断
- 適応:夜泣き、いらいら、鼻血、皮膚炎、乳児湿疹、小児の神経症、不安症
- 舌:紅・苔やや黄/脈:弦・やや数
- NG:虚証・冷え症体質・寒湿傾向・陰虚火旺型のときは適さない
📊 和漢製剤と中医学の違い
日本では**小児科処方・皮膚科・精神科**で応用され、ツムラ80番として広く使用。
中医では「肝火上炎・肝風内動・肝鬱化火」などの病態に位置づけられ、**神志・皮膚・血熱症状**に用いられる。
📦 製剤別の比較とOTC入手
- 医療用: ツムラ80番、コタローが発売されている。
- OTC:ドラッグストア・通販で購入可能(症状マッチングの確認は必須)
💊 副作用と注意点
- 柴胡:間質性肺炎リスクあり。長期使用・併用薬に注意
- 黄芩・石膏・山梔子:寒性が強く、虚寒体質では胃腸障害や冷え悪化のリスク
- 甘草:偽アルドステロン症に注意。浮腫・高血圧の既往要確認
🔁 他処方との鑑別・類方比較
- 抑肝散加陳皮半夏:怒り・緊張・神経症が主なとき
- 加味逍遙散:月経関連のイライラ・冷え傾向ある虚実中間型
- 竜胆瀉肝湯:より強い下焦湿熱・かゆみ・排尿異常が中心のとき
👨⚕️ 服薬指導のポイント
- 「落ち着きがない」「いらいらしやすい」「顔が赤い」「夜泣きが続く」などにマッチ
- 使用前に**体質(実熱・虚寒)鑑別が必須**。冷え症・便秘傾向の有無を確認
- 1週間以内に神経の落ち着き・かゆみの軽減を指標に経過観察
🧾 使用例と処方医の意図
- 乳児・幼児の夜泣き・神経不安・小児湿疹
- アトピー性皮膚炎:顔面紅潮・いらいら傾向がある場合
- 鼻血・頭痛・のぼせを伴う学童期の緊張型障害
🔚 まとめ|“肝熱・神経不安・皮膚症状”を沈める清肝・疏肝の現代的方剤
柴胡清肝湯は、小児の神経症状・いらいら・皮膚炎・便秘・肝火上炎を同時に整える名処方です。
薬剤師としては、「実熱型の子ども」の特徴を見抜き、**虚寒体質への誤投与を防ぐ指導力**が求められます。
また、保護者への**体質理解+生活習慣指導**のセット提供が、継続的な効果実感に直結します。